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永遠に咲く花を君と。  作者: ChaCha


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代々引き継がれている任務

「次は……お前の番だ」


そう言われて、書類を受け取った瞬間、胸の奥がずしりと沈んだ。


今日から、シュタット冒険者ギルドは俺のものになる。

正確には――この街と、このギルドに属するすべての生命が、俺の肩に伸し掛かる。


「……最善を尽くします」


形式的な言葉だった。

それでも、口にしなければ立っていられなかった。


続けて、もう一枚。

古びた紙束が、机の上に置かれる。


「これは、代々ギルド長に就任した者が引き継ぐ任務だ」


……嫌な予感しかしない。


渡された紙に、無言で目を落とす。


「……1000年後まで?」


顔を上げると、向かいの男は当然のように頷いた。


「そうだ。正確には、2393年、そして2394年までだ」


喉が鳴る。


「……その年に、登録に来る青年を指定している?」


意味が、わからない。


「事前の登録予約……ですか?」


問いは、ほとんど反射だった。


返ってきたのは、言葉ではなく、紙の端を指で叩く仕草。

そこに続きがあることを、ようやく理解する。


……時空。

時を遡る。

転送トラップ。


「……は?」


背筋が冷えた。


これは、最大級の機密案件だ。

下手をすれば、世界の時間軸そのものに影響する。


なんて爆弾を……抱えさせてるんだよ……!


「……待て。落ち着け、俺」


年号を、もう一度確認する。


2393年。


――三年後。


「俺の代じゃねぇか……!!」


向かいの男が、心底楽しそうにニヤリと笑った。


「本当に、その青年が登録に来るのか……見届けられるんだぞ。楽しみだな」


……この野郎。


要するに、だ。


その青年を、禁足地――旧神殿のダンジョン調査へ向かわせる。

目的は、トラップの確認と調査。


確認、という名の――起動条件。


彼が過去へ飛ばされなければ、

世界の時間軸がズレる。


下手をすれば、消滅。


「……責任が重すぎて吐きそうだ」


ふと視線を上げると、男と目が合った。


……やっぱりな。


俺に席を譲った理由。

最初から、これだったわけだ。


それから三年後。

密かに、俺とあの男は賭けをしていた。


「来ると思うぞ」

「……いや、わからないでしょう」


受付に、冒険者登録の青年たちが並ぶ。

ひとりひとり、何気ないふりをして名前を確認する。


そのときだった。


中央カウンターの受付が、こちらに合図を送る。


……まさか。


名前を、見る。


クオン。

戦闘魔術師。


……彼だ。

間違いない。


背後で、酒瓶の音がした。


「今日の酒は美味いな!」


……奢り、確定。


そして、俺の任務も、静かに確定した。


翌年、2394年。


「古代遺跡ダンジョンが発見された」


ギルドの空気が、わずかに変わる。

未踏破――その言葉に、期待と緊張が混じる。


「今回は軽い調査だ。本格的な踏破は後になる」


俺は、最後まで悩んだ。


1000年。

代々、受け継がれてきたこの任務。


彼に、真実を告げるべきか。

それとも――知らないまま、跳ばすべきか。


何も知らずに、1000年前へ送られる青年、クオン。


……何か、できないのか。


悩み抜いた末、俺は一つの手段を選んだ。


ギルドカードへ――

ギルド長にしか視えない術式で、メッセージを刻む。


2393年から、1394年のギルド長宛てに。


彼と、彼女への最大限の支援を願うこと。

そして、この任務の存在。


どうか、無事に……辿り着けるように。


後日。


旧神殿の調査隊から、報告が上がった。


クオンが、魔術陣に呑まれ、消失したこと。

その後、残された魔術陣とダンジョンコアが自壊し、

旧神殿のダンジョン化が解放されたこと。


静かな報告だった。


――こうして。


俺たち、シュタットのギルド長に課せられた任務は、

静かに終わった。



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