表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
永遠に咲く花を君と。  作者: ChaCha


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

37/40

またあなたに逢えた

光が、割れた。


――違う。

割れたのは、光じゃない。


視界だ。


上下が曖昧になる。

左右の感覚が、遅れて追いついてくる。


床があるはずの場所に、床がない。

天井があるはずの高さに、重さがない。


「……っ」


声を出そうとして、喉が震えた。


音が、遅い。


自分の呼吸が、

一拍遅れて、背中の奥から返ってくる。


――ズレている。


時間と、距離と、私。


どれか一つが、必ず遅れている。


目を開けているのに、

見えているのは“今”じゃない。


石畳。

崩れかけた柱。

淡く残る魔術陣の痕跡。


……旧神殿。


でも。


違う。


この角度、この欠け方、この光の入り方。


知っている。

知っているのに、合わない。


胸の奥が、ぎゅっと掴まれた。


――また、だ。


この感覚。


足を一歩出そうとすると、

「出したはずの一歩」が、先に見える。


遅れて、身体が追いつく。


気持ち悪い。

でも――


懐かしい。


頭の奥が、熱を持ち始める。


視界の端で、

誰かが“立っている気配”がした。


振り向くより先に、

心臓が、勝手に跳ねる。


――ああ。


これだ。


これが、

何度も、何度も、私を引き戻してきた感覚。


彼の背中が、

まだ輪郭を持たないまま、そこにある。


見えていないのに、

位置が、わかる。


距離も。

高さも。

呼吸の間も。


喉の奥が、ひりついた。


「……ク、オン……」


声にならない。


なのに、

呼んだ感覚だけが、はっきり残る。


魔力が、皮膚の内側を這い上がってくる。


――刻まれている。


彼の魔力と、

私の魔力の残滓が。


重なって、

絡み合って、

ほどけないまま。


視界が、一瞬だけ二重になる。


旧神殿の大広間。

その上に、別の時間の大広間が重なる。


壁画が、鮮やかすぎる。

色が、まだ生きている。


あの日の。

踊った日の。

笑った日の。


「……やっと……」


言葉が、震えた。


これは、失敗じゃない。


これは――


“思い出している”感覚だ。


未来から過去へ来たのではない。

過去に“辿り着いてしまった”。


だから、

記憶が、先にある。


だから、

胸が、こんなに苦しい。


足元で、

魔術陣が低く鳴った。


鈴の音。

でも、それはもう外の音じゃない。


――内側だ。


私の魂が、

“正しい位置”を見つけようとしている。


一歩。


また、一歩。


今度は、ズレない。


床の感触が、

ちゃんと、足裏にある。


空気が、重い。

でも、それすら、知っている。


胸が、いっぱいになる。


確信が、落ちてきた。


ここだ。


この時間だ。


この世界で、

私は――


「……間に、合った」


そう呟いた瞬間。


視界の奥で、

“誰かが、こちらを振り向く途中の気配”がした。


まだ、顔は見えない。


でも。


次の瞬間、確実に――抱き締めた



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ