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永遠に咲く花を君と。  作者: ChaCha


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14/40

人生初の夜を君に捧げる。

俺の想いを、受け取ってくれた。

一目惚れが――成就した。


シャワーを、終えた。


湯気の残る空気が、ゆっくりと肌を包む。

石壁に残る水音が、まだ耳の奥で揺れていて、

濡れた床の冷たさが、足裏から静かに現実を伝えてくる。


胸の奥が、やけに騒がしい。

鼓動が一拍遅れて、追いかけてくる。

呼吸を整えようとしても、うまくいかない。


今から、初めての二人の夜だ。


灯りは強くない。

揺れる炎が、彼女の輪郭をやわらかく縁取っている。

髪から立ちのぼる湯の匂いと、微かな石鹸の香り。

それだけで、思考が一段落ちた。


全力で、記憶を引っ張り出す。

閨の作法なんて、先輩や友人から聞いた話だけ。

笑い混じりの忠告と、断片的な言葉。

実感は、ひとつもない。


喉が、ひくりと鳴る。


「私、初めてなんだよねー」


軽い調子。

冗談みたいな声音なのに、

その一言が、胸の奥に真っ直ぐ落ちてくる。


空気が、ほんの少し静かになった。


「……う、あ。俺も……です」


視線を逸らしながら、答える。

目を合わせたら、崩れそうだった。


「優しくしてね?」


やわらかな声。

距離は変わらないのに、

体温だけが、近づいた気がした。


――こく、こく。


言葉より先に、身体が反応していた。

頷くたび、喉の奥がひりつく。


触れていないのに、

もう触れてしまったみたいに、

心臓だけが正直だった。


ま、まずは……

口付けから。


ちゅっ。


短い音。

それだけなのに、胸の奥が跳ねる。

音が消えたあとも、余韻だけが残り、呼吸の置き場が分からない。


……ヤバい。


相当、照れる。

プロポーズの時は必死で、感じる余裕なんてなかった。

今は――逃げ場がない。


角度を少し変える。

また、触れる。


柔らかい。

あたたかい。

思考が、追いつかない。


「……トワ」


名前を呼ぶ。

声が、思ったより低く出た。


彼女は、目を開けたまま、

じっとこちらを見ている。


一瞬、不安がよぎる。

それでも、彼女は離れない。


衣服に、そっと手を掛ける。

指先が、微かに震えた。


布の擦れる音。

その一つ一つが、耳に残る。


現れた肌は、灯りを受けてやわらかく光っている。

息を、飲む。


俺も、身を委ねるように、距離を詰めた。


空気は静かなのに、

呼吸と鼓動だけが、やけに大きい。


無言のまま、視線が絡む。

触れていないのに、

もう戻れないところまで来た気がした。


「……見過ぎだろ」


冗談めかして言うと、

彼女は小さく笑う。


その一瞬で、緊張がほどけた。


ゆっくりと、距離が縮まる。

触れるたび、相手の存在がはっきりしていく。


息が近くて、

温度が重なって、

時間の感覚が、曖昧になる。


言葉は少なく、

確かめるような動きだけが続く。


彼女の反応が、

そのまま伝わってくる。


「……大丈夫」


そう言うと、

彼女は小さく頷いた。


それだけで、十分だった。


ゆっくり、ゆっくりと。

互いを気遣いながら、

確かめ合う時間が、静かに深まっていく。


途中で、

彼女が少しだけ息を詰め、

それから、力を抜く。


その変化が、胸に刺さる。


「……トワ」


名前を呼ぶと、

視線が合う。


「……俺は一生、君を愛する」


その言葉に、

彼女は、確かに頷いた。


あとは、言葉はいらなかった。


呼吸が重なり、

温度が溶け合い、

時間が、静かに流れていく。


その夜。

俺たちは――眠らなかった。


彼女が、俺の妻になった。


その喜びだけで、

人生最大の幸福に、満たされた日になった。



月明かり版は、濃くしております。

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