8 突然起こる写真撮影会はカオス
中央広場に入った瞬間、空気が変わった。
ざわざわ……と人の気配が密集していて、何かを囲むような円ができている。
……うん、嫌な予感しかしない。
「りぃ……?」
フローラが、不安そうに羽を震わせた。
「大丈夫よ。たぶん、あいつらだから」
軽くため息をついて、私は人混みをかき分ける。
ほんの少しだけ、胸が高鳴る。
広場の中心。
噴水のそばに――いた。
海斗と響。
キースとジークの姿で。
金髪のキースは腰に手を当てて静かに立ち、周囲を観察している。
白銀髪のジークは時々プレイヤーに会釈をしていて、相変わらず紳士。立ち姿が騎士なんだけど?
……そりゃあ人が集まるわ。
「おーい、2人ともー。来たよー」
手を振ると二人が同時にこちらを見た。
キースは目を細め、ジークは穏やかに微笑む。
「マリ」
「マリさん」
2人の声を聞いた瞬間――周りがざわついた。
「マリ!?さっきスレで話題になってた……!」
「本人来た!!!」
「推理兄弟の“マリ”ってこの子か!?」
……いや、なんで私が盛り上がってるの。
とりあえずフローラを紹介しようとしたその瞬間――。
「り、りぃっ!?」
フローラが突然震え、
私の髪の中に頭からダイブした。
「ちょっフローラ、なにしてるの?」
髪の中で小さく震える気配がある。
キースを見る。
光の反射で美貌がさらに強調されている。
……あぁ、なるほど。
これは緊張するわ。
「お前が原因か」
「俺はなにもしてない」
「その美貌はなんとかならないの?」
「?」
本気で不思議そうにするキース。
髪の中のフローラは「りぃ……」と情けない声を出している。
するとジークが一歩、優しく前に出る。
「初めまして星霊さん。怖がらなくても僕達はマリさんのお友達ですよ」
その声に安心したのか、
髪のすき間から──ちょこんと顔だけ出した。
「……り?」
ジークが柔らかく微笑むと、フローラの羽が嬉しそうに震えた。
「りぃぃーー!!」
完全復活。
私の頭の周りをぐるぐる飛び回り、ジークの肩のそばでくるくる踊り始めた。
「単純で助かるな」
「キースが怖かったんでしょ」
「……心外だ」
心外という割には表情が微妙にやわらいでいる。
さて、そろそろ挨拶させないと。
「遅くなったけど2人ともこの子はフローラ。花の精霊なんだってほら。フローラ2人に挨拶」
するとフローラは――なぜか急に真剣な顔になり。
右手をぴしっと顔の横に当てて、見事な敬礼をしてみせた。
「りぃっ!!」
「え、なんで敬礼?」
広場が――爆発した。
「かわいいいい!!!」
「なんで敬礼!?最高すぎる!!」
「写真!!誰か写真!!」
「推し星霊決定した!!!」
敬礼したフローラをみた2人はと言うと。
キースはジッと観察し、ジークは。
「ふふっ敬礼ですか。なら返さないといけませんね」
は?
その瞬間ジークが敬礼をすると、今日一番の歓声が上がった。
「ジーク様ーー!!!」
「なんでそんなに絵になるの!!?」
「騎士じゃん!もう騎士でしょ!!?」
私は……笑うしかない。
完璧すぎるんだよ、ジーク。
もうどこから見ても騎士じゃん。
今の写真で欲しいわ。
……そうだ。せっかくなら2人の敬礼した写真撮らせてもらお。
「ねえ、2人が敬礼してる写真撮りたい」
「勿論構いませんよ」
「りぃ!」
私はキースにも声をかける。
「キースも入る?」
「俺はいい」
即答だった。
逆にかっこいいわ。
噴水の前で、ジークとフローラが横に並び、そろって敬礼。
シャッターを切った瞬間。
「いいなぁぁぁ!!!」
「写真うらやま!!!」
「こっち向いてーーー!!」
周囲がさらにざわめく。
……これ、多分あとで押し寄せてくるよね。
なら、いっそのこと写真撮影会する?
「ねぇ、トラブルにならないためにも他のプレイヤーにも写真撮らせてあげてもいい?」
「いいですよ」
「りぃ!」
「ネットにあげる許可は?」
「ネットですか?僕は気にしないですよ」
「じゃあ時間は3分程度ね、頑張ってね。2人とも」
「はい」
「りぃ!」
私は大きく息を吸って──。
「はーーい!みんなー!!3分間だけ、ジークとフローラの撮影を許可しまーーす!!ネット掲載もOKだそうでーーす!!」
一瞬の静寂。
その後――地獄が始まった。
「うおおおお!!!」
「こっち向いてー!!ジーク様ー!!」
「フローラちゃーーん!!」
「可愛い!!天使!!!」
「横から撮るな!いやむしろ撮れ!」
「ジーク様!こっち向いてください死んでしまいます!!」
ジークは完璧な敬礼。
フローラは得意げに敬礼。
キースは一歩後ろで静かに観察。
私は……ドン引きしていた。
3分後。
撮影会が終わっても、興奮冷めやらぬプレイヤー達がざわざわと盛り上がっていた。
この日、SNSで騎士と星霊がトレンド1位に上がった。




