7 2人がいないのに目立った
フローラが、嬉しそうに私の目の前へ降りてきた。
薄い蝶の羽がきらきら光って、まるで風に溶けるみたいだ。
「お待たせ」
「りぃ!」
指の腹で頭を撫でると気持ちよさそうに目を細める。
力加減難しいな、首がぐらぐらしない様にしないと。
「さ、行こうか。フローラに紹介したい人がいるの」
「りぃ?」
2人はもう集合場所にいるのかな?
歩いていると、私の横をふよふよと飛びながら並走してくる。周りのプレイヤーの視線が刺さるなぁ。
2人がいないのに視線が刺さるのは初めてかも。
「え、あれ……なに?ちっさ」
「テイマーか?」
「いや、あんなの見たことねえぞ。新種?」
「てか可愛いんだけど」
「羽……光ってる?」
「ていうかあの子、アバター可愛すぎない?」
「星霊じゃね?いや嘘だろ初日だぞ?」
「ってことはアストラリストか。βテスターか、特典で手に入れたんだろうな」
……絶対わたし達のことだよね。
フローラ、人気者すぎる。
「りぃ!」(ドヤ顔)
「いばらないの……」
肩に乗る小さな星霊のせいで、2人がいる時みたいに視線を浴びてる。
星霊と一緒にいるだけでこんな目立つのか……。
そんなことを思いながら、エノラの街を歩き出す。
街は、想像していたよりずっと広かった。
潮風、行き交う人々、石畳の道。
露店からはスパイスの匂い、焼いた肉の香り、甘いパンの香りまで漂ってくる。
……お腹すいてきた。
「りぃ……?」
フローラが心配そうに私の頬に触れてくる。
「大丈夫よ、ちょっとお腹減っただけ」
そんなやり取りをしながら中央広場へ向かっていると――フローラが突然、肩の上で「りっ!」と鳴いた。
同時に、前方からNPCが荷物を抱えたままぶつかってきそうになり、私は慌てて横へよけた。
「ご、ごめんなさい」
「いえ、こちらこそ失礼しました。……その肩の子は星霊ですか?」
「え、あ……たぶん、そう……なのかな?」
「そうですか。アストラリストとは珍しい……大切にしてあげてください」
そう言って去っていくNPCを見送りながら、私はフローラをそっと撫でた。
「ありがとね、気づいてくれて」
「りぃ」
ゆっくり景色を見ながら中央広場に近づくほど、周囲がざわざわしてくる。
「あれまだいるの?」
「兄弟だろ?やべえ顔してるほう」
「NPCじゃないってマジ?」
「キースとジークって名前らしいぞ」
「写真撮る勇気はなかった……無理……」
……あいつらかぁ。
「りぃ?」
「会えば分かるわよ…」
ため息を吐きながら私は中央広場に入った。




