5 いよいよ到着、春の大陸ヴェリシア
『ステータスポイントを割り振ってください』
手動とおすすめの二択が表示されている。
考えるの面倒だし、オススメでいいか。
自分で悩むより確実だしね。
タップした瞬間、ウィンドウが淡く光った。
『アストラリスト適性値に基づき、最適なステータスに調整しました』
名前:マリ 種族:人間 基礎Lv1
職業:アストラリスト 職業Lv1
HP:80 MP:120
腕力:8 防御:7 俊敏:11
知力:14(+20) 精神:15(+50) 器用:12(+20) 幸運:10(+10)
精神が異様に高いな。
何でだろ?……まぁ、やって行ったら分かるか。
続いて別のウィンドウがポンッと開く。
『スキルを3つ選んでください。』
戦闘スキルと生産スキルがズラーーーーっと表示された。
多い多い。
この中から決めろってことでしょ?うわ、どうしよ。とりあえずやりたい事を優先で選んでいけばいいかな?
やりたいのは。
ポーションを作る調合。
ポーションを作る材料を集めるための採取。
ポーションの材料の品質を上げ、育てる栽培。
あ、3つ埋まったわ。
戦闘スキルないけど大丈夫かな?っと思ったら自分のステータスに選んだ覚えのないスキルが表示されていた。
スキル:星霊契約/星霊術/指揮/料理
ヘルプを見たら、どうやらこれはアストラリストが持つ初期スキルの様で、初期スキル+3つ選べるみたい。
なるほど?戦闘スキルか分からないけど名前的に強そうな星霊術入ってるから戦闘は問題なさそう。
最終確認をして完了ボタンをポチッと押す。
『スキル設定が完了しました』
ウィンドウが静かに消えると、足元がふっと揺れた。
『キャラクター設定を完了しました。これより移民船へ移行します』
白い光が視界を覆い、
浮いているような、不思議な感覚に包まれる。
そして──。
ぱち、と目を開けた。
「……ここが、移民船?」
白くて無機質な金属の壁、青いラインの照明。
近未来っていうか、宇宙船って感じだ。
次々と光のエフェクトが現れ、他のプレイヤーがログインしてきている。
「やっべ…超リアル……!」
「うわ!ワクワクしてきた!」
「ねえ、もう友達と合流できるの?」
みんな好き勝手に喋っている。
皆んな楽しみなんだなぁ、私もだけど。
そのとき、私の左手がふっと温かくなった。
星霊の指輪が、ほんの一瞬だけ光る。
まるで、中の子が寝返りをうったみたいに。
中にフローラがいるのかな?
指輪を見ていると、船内にアナウンスが聞こえた。
『新規移住者の皆様。春の大陸、ヴェリシアへまもなく降下します。揺れにご注意ください』
直後、ドン、と軽く揺れた。
私は窓際へ近づき、外を見下ろす。
…………凄。
緑が広がる大地。
湖のように輝く水面。
丘の向こうに見える、大きな街の影。
想像していたよりずっと広くて、ずっと綺麗で。
――ずっと、冒険っぽい。
『降下を開始します』
船体がゆっくりと角度を変え、大陸へ向かって下降していく。
やがてエンジン音が低くなり、港らしき場所が視界に入った。
露店、荷物を運ぶNPC、プレイヤーらしき人影、馬車、そして大都市の巨大な城壁。
『エノラ船着場へ到着しました。ご搭乗ありがとうございました。お気をつけて行ってらっしゃいませ』
ハッチが開き、まぶしい光が差し込む。
私が一歩踏み出すと、潮風と賑やかな声が一気に押し寄せてきた。
「すご……本当にゲームの中なんだよね?」
潮風の匂い、商人の呼び声、冒険者たちの談笑、露店の匂い、人のざわめき。
まるで現実の街に降り立ったような熱気に包まれる。
星霊の指輪が、また小さく光った。
呼んでるのかな?どうやって呼び出せばいいの?
名前とか呼んでみる?
「フローラ?」
すると指輪から花びらの光が舞い、一つに集まった光がふわりと形を取り始める。
「りぃ!」
フローラが、嬉しそうに私の目の前へ降りてきた。




