表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星霊とまったり旅するアストレリア  作者: はちみつレモン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

51/62

50 訓練2


砂埃がゆっくりと落ちていく。


さっきまで何も見えなかった視界の中に、ようやくジークの姿が浮かび上がった。


位置が──変わっている。


さっきまで衛兵たちに囲まれていたはずなのに、今はその輪の“外側”、誰にも挟まれない場所に自然と移動していた。


「……位置取りを変えたか」


キースが小さく呟いた。

その声には評価の色があった。


私はただ、ぽつんと思う。


この状況で、動きながら陣形を見てるんだ……


ジークは静かに息を整え、足を少しだけ開いた。

あの姿勢になるときは“攻勢に転じる”ときだ。


衛兵たちが一斉に声を上げる。


「前衛、構え! 取り囲め!」


足音がどっと迫る。


ジークが、ふっと地面を蹴った。


「──っ!」


踏み込みの速度が、さっきと違う。

一段階、明確に速くなった。


槍が迫る。

剣が横から振られる。


そのすべてを、ジークは滑るように避けながら懐へ潜り込み、柄で顎を弾き、足払いを入れ、ついでに後ろの一人を肘で押し流す。


3人、4人、5人──連続で砂の上に倒れていく。


「りぃ……!」


フローラが目を丸くして私の肩にしがみついた。


カゲマルは若干震えながら、録画ウィンドウを固定する。


「やっば……ジーク様、本気モードっすよ……!これ、絶対バズる……!」


あなたは静かに撮ってて。


私は目を離せずにいた。


ジークは確かに優しいし、温厚で、礼儀正しい。

でも今目の前にいるのは──


戦い慣れてる……そういう言葉しか出てこない


まるで水の流れみたいに、止まらず、淀まない。


そんなジークを、衛兵たちのAIは見逃さなかった。


「隊列を組み直せ! 槍隊、前へ!」


がしゃん、がしゃん──

並び替えられる盾と槍の壁。


私は思わず口を開いた。


「うわ……これ、普通に無理なやつじゃない?」


すぐ隣で、カゲマルがひそひそ声で返す。


「そうなんすよ……この陣形、騎士団イベント級っす……

 生半可な前衛じゃ突破できないっす」


それを一人で?


さすがに今回は厳しいんじゃないかと思った、その瞬間。


ジークの構えが、また変わった。


重心をぐっと低くして、足の裏で砂を軽く払う。


「……加速する気か」


キースが目を細める。


その“読みの声”が聞こえた途端だった。


ジークが、地面を裂くような勢いで飛び込んだ。


槍の届くより一瞬早く。


盾で防がれる前に潜り込むように。


「っ……!」


衛兵の槍がジークを貫こうと伸びた──が。


ほんの一瞬、ジークが姿勢をずらしたせいで、槍先はわずかに空を切る。


そのフェイントで隊列が歪んだ。


「今っ!」


ほんの声が漏れた。


ジークは迷わず中央に踏み込み、

盾ごと押し流すようにして突破する。


砂がざわっと盛り上がり、数人が同時に倒れ込んだ。


「すっげぇ……! 本当に抜きにいってる……!」


カゲマルが感激で震えている。


私はというと、ただただ息を飲みながら眺めるだけ。


ジークって、こんな顔で戦うんだ……


優しさとか、控えめなところとか、そういう印象とは違う。


“勝ちに行く者の顔”だ。


キースは、そんな弟の姿を黙って見つめていた。


目の奥が、わずかに楽しそうに光っている。


「……動きが洗練されてきたな。悪くない」


その小さな声を聞いたとき。


あ……そうか


キースは、ただの観戦じゃない。

観察してるんだ。

ジークの成長を、戦い方を、全部。


そして。


「第二列、前進!!」


衛兵たちが再び立て直し、槍の先を揃えた。


人数はまだ半分以上残っている。


ジークは深く息を吸い、剣を握り直した。


その視線の先で、盾を構える前衛がじりじりと距離を詰めてくる。


空気がまた張りつめる。


ここからが本番みたいだ。


私はフローラを抱え直し、息を飲んだ。


ジークが低く構え、

衛兵たちの足が同時に動いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ