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星霊とまったり旅するアストレリア  作者: はちみつレモン


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50/61

49 訓練1


衛兵NPC五十名が整列して待ち構える訓練場は、

空気そのものが張りつめていた。


砂地に薄い風が走り、静けさだけが耳に残る。


ジークは前に立ち、軽く深呼吸した。

その背中は、ただの訓練というより“覚悟”に近い。


「訓練開始!!」


衛兵全員の声が揃って響いた瞬間、

砂埃が一気に舞い上がった。


私は後ろに立ち、フローラを胸元に抱えながらゆっくり息を吐く。


「……始まったね」


フローラは緊張しているのか、

私の服をきゅっと掴んで震えていた。


「りぃ……」


カゲマルはといえば、

すでにカメラウィンドウを展開して撮影態勢。


「よし……自分、全力で撮るっす……!!」


気合いがすごい。


その横で、キースは腕を組んだまま、

何も言わず戦場を見つめていた。


彼の目はいつもの冷静な色。

けれど、どこか楽しそうでもある。


***


まず動いたのは衛兵たち。


三方向から同時に踏み込み、

挟み込むような連携でジークに迫る。


動きがほんとにNPCとは思えない。


けれどジークは――全く動じない。


たった一歩だけ下がり、

それだけで三人分の攻撃軌道を外した。


「……え、避けた」


思わず口から漏れる。


ジークは視線ひとつ揺らさず、

最初の衛兵の槍を手首で流したかと思うと、

反動を使って隣の剣を弾く。


そして三人目の肩へ、

剣の柄を軽く当てて吹き飛ばした。


「三人、無力化」


淡々とキースが言う。


数えるんだ。


私は半ば呆れ、半ば感心しながら見続けた。


***


衛兵たちはすぐに動きを変えた。


今度は速度重視の小隊が突撃し、

後方からは重攻撃隊が圧力をかけてくる。


カゲマルが小声で呟く。


「第二フェーズ来たっすね……。ここ、普通のプレイヤーなら詰むっす」


ジークは剣を逆手に持ち替え、

蹴りを混ぜながら攻撃の流れを切っていく。


砂を踏む音、金属が擦れる音、

水でも流れるみたいな滑らかな動き。


私はその場面をぼんやり眺めながら思った。


「……ネリスの時より早いかも」


キースはそっけなく答える。


「当然だ。足場が安定しているからな」


水の中であれだけの動きを見せていた人が、

地上ならもっと強くて当然か。


***


衛兵の一撃がジークの頬をかすっていく。


ほんの一瞬のことだけど、

ジークの髪がさらりと揺れて、その速度を物語っていた。


フローラは不安そうに私の腕を掴む。


「りぃ……」


私は特別驚かなかった。

この人たち、本気で戦ってる時はいつもこうだ。


ただ、胸の奥はざわざわしていた。


五十人相手って、想像していた以上に無茶だ。


***


数合交えた頃、

ジークの呼吸がわずかに荒くなり始めた。


まだ十人ほどしか倒していない。


「やっぱり、五十人って無謀なんじゃない……?」


ぽつりと呟くと、カゲマルがすぐ横で同意する。


「無理っすよ普通。前線勢でも半分ももたないっすから」


キースだけが涼しい顔で、

淡々と観察するように言った。


「問題ない。あいつは状況を把握している」


「……状況?」


キースの視線の先を追うと、

ジークは戦闘しながらも周囲を見渡していた。


隊列、距離、砂地の状態。


まるで全体の配置を“計算”しているみたいだった。


「……なるほど。そこを使う気か」


キースが小さく呟く。


「え?どこ?」

「見ていろ」


と言われたので、とりあえず黙るしかない。


***


衛兵が一斉に距離を詰めた瞬間、

ジークが大きく踏み込んだ。


「――っ!」


砂が高く舞い上がり、視界が一気に白く染まる。


その中へ、ジークが迷いなく飛び込んでいく。


私は思わず息を呑む。


カゲマルは興奮して叫んだ。


「来た来た来た!!これ、絶対次にヤバい展開来るやつっす!!」


フローラは私の胸元にしがみつき、

キースはほんの少しだけ目を細める。


「……ここからだ」


砂が落ち始め、

ジークの姿がゆっくり現れる。


――真正面から五十人を倒しにいく覚悟の目で。


五十人抜きは、まだ始まったばかりだ。


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