48 ミッションの内容が鬼
冒険者ギルドを出て、石畳の道をしばらく歩いた頃だった。
「ジーク様、お待ちしておりました!」
突然、左右から声がかかる。
振り向くと、銀の胸当てを着た衛兵NPCが二人。
姿勢はびしっと伸びていて、やけに気合いが入っている。
今度は何が起きるんだろー。
ジークは少し困ったように微笑む。
「僕に……何か?」
衛兵Aは緊張した様子で口を開いた。
「はい! ここカフレアは商業都市でございます故……
人と物の出入りが多く、通報も絶えません。
しかし、その分――街を守る我々の力も必要とされます」
衛兵Bが続ける。
「ですが、我々自身……今の実力で本当に街を守り切れるのか、疑問がありまして……」
それで、と二人は揃って深々と頭を下げた。
「ジーク様に! どうか訓練をつけていただきたく!上官に進言し、捜索し、こうしてお待ちしておりました!!」
……ジーク人気…騎士なんて呼ばれるからこんなことに。
ジークは慌てて両手を振った。
「ちょ、ちょっと待ってください。僕は上官ではありませんよ?」
「はい! 重々承知しております!!」
「ですが、是非! ご指導を!!」
聞く耳ゼロだった。
ジークは視線で私に助けを求めてくる。
……ああ、はいはい。
“どうします?”って顔だね、それ。
「急ぎの予定はないし、いいんじゃない?」
私がそう言うと、衛兵たちはぱぁっと顔を輝かせた。
「ありがとうございます!! こちらへ!!」
二人の衛兵が走り、私たちを誘導する。
私は特に何も考えず、この2人といると飽きないなーと思いながら後をついて行った。
* * *
しばらく歩くと、広い訓練場に着いた。
砂地の広場には――
ずらりと、衛兵NPC約50名 が整列していた。
え、多くない?
キースも目を細める。
「……ずいぶん用意したな」
カゲマルはというと、すでに私の後ろにそっと立ち、
カメラウィンドウを開く準備をしていた。
準備万端じゃん。
ジークは戸惑いつつも、一歩前に出る。
その瞬間――
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《ミッション発生》
【衛兵NPCを50人抜きしろ】
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「……え?」
私の呟きと同時に、カゲマルがぽそっと耳打ちしてきた。
「マリさん……衛兵NPCってほんとヤバいっすよ」
「そうなの?」
「はい。自分、一回どれくらい強いのか試したんすけど……
2秒で地面に転がったっす」
即落ちじゃん。
「そのあと前線プレイヤー達も挑んだんすけどね……
全員まとめて瞬殺でした」
「……そんなに強いんだ」
「戦闘AIがガチで高性能っす。
一騎当千どころか、一騎五十ぐらいあるっすよ」
……そんな相手を、ジーク一人で相手にするの?
不安になってキースを見たら――
ものすごく楽しそうな顔で戦場を見ていた。
完全に、“いい見物ができる”って顔。
ジークは前に出て、深呼吸をひとつ。
その背中は、覚悟を決めていた。
衛兵たちが声を揃える。
「訓練開始!!」
一斉に構えられる槍と剣。
砂埃が舞い、空気が張り詰めた。
私はフローラを胸元に抱き寄せながら、静かに息を呑んだ。
ジーク、頑張って。
ここから始まるのは、ただの訓練じゃない。
一人 vs 五十人の真剣勝負だ。




