47 結構高く売れた
カフレアの冒険者ギルドは、港町エノラより少し静かで、整理された建物が印象的だった。
「素材、どれぐらい売れるかな?」
そう言うと、フローラが私の肩に降りて、小さく羽を震わせる。
「りぃ?」
「お金ないからね。せめて1000Gは取り戻したい」
フローラは真剣な顔で頷いた。
ほんとにわかってる?
ギルドの中は昼時のせいか少しだけ混んでいる。
私はいつも通り落ち着いて歩いて、素材査定のカウンターへ向かった。
***
カウンターで静かに声をかける。
「素材の査定、お願いします」
受付のNPCは丁寧に頷いたが、私の背後に立つ二人に気づいた瞬間――
一瞬だけ目が開いた。
けれどNPCなだけあって、驚いても仕事を投げ出したりはしない。
「確認いたします。素材をお預かりします」
私はインベントリから素材を並べていく。
・草影のケルプホーンの角 ×1
・草影の柔毛 ×3
・ブルースライムキングの核 ×1
・ブルースライム粘体 ×5
・薬草 ×8
・ついでに草原で拾っていた素材いくつか
「以上です」
受付NPCは淡々と頷き――次の瞬間、
素材を抱えて奥へ向かって走り出した。
「走らなくても良いのに……」
暇そうに小川を見つめていた時より、さらに気の抜けた声が出た。
フローラは肩の上で足をぷらぷらさせながら、
「りぃ〜……」
と、ひたすら暇そう。
キースは無表情。
ジークは小さく笑っている。
***
しばらくして――
受付NPCが息を切らしながら戻ってきた。
「お待たせいたしました……!こちらが査定結果になります……!」
差し出されたウィンドウを見ると、数字がずらっと並ぶ。
──────────
《素材総査定額》
ケルプホーンの角 → 高級素材扱いで高額
ブルースライムキングの核 → 希少素材のため特別価格
粘体と薬草 → すべて品質良好
合計:2,480G
──────────
「……え、こんなに?」
正直ちょっとだけ驚いた。
フローラは満足そうに胸を張る。
「りっ!」
え、あなた何もしてないでしょ……。
ジークが柔らかく言う。
「キング系モンスターの核は高額なんです。いい収入ですよ」
キースも静かに頷いた。
「妥当な額だ」
私はウィンドウを閉じて、小さく息をついた。
「これで……しばらく生活できるね」
「りぃ♪」
フローラの声が嬉しそうで、ちょっとだけ笑った。
***
ギルドを出た瞬間だった。
「出てきたっすねぇぇ!!」
勢いよく誰かが飛び出してきて、フローラがびくっとする。
「あ、カゲマルじゃん」
黒装束のシーフ、カゲマルが柱の影からすべり出てきて、胸を張って言う。
「自分、冒険者ギルド入る直前からずっとついて来てたっす!」
「そうなんだ。全然気づかなかった」
「兄さん、動きは見えてましたよね」
ジークが苦笑する。
キースは軽く目を細めて言う。
「悪くはないが……影の使い方が甘い。木陰と建物の死角の境界で気配が露出していた」
「本気で隠れてたのに……!」
カゲマルは普通にショックを受けていた。
私は落ち着いた声で聞く。
「で、何か用?」
カゲマルはぱっと顔を輝かせ、親指を立てた。
「自分、次の街まで同行しつつ撮影したいっす!」
「あぁ……うん。そう来るよね」
キースとジークに視線を向けると――
「好きにしろ」
「僕も構いません」
どうやら許可されたようだ。
カゲマルは勢いよく頭を下げる。
「ありがとうございます!!全力で撮影するっす!!」
私は素材売却のウィンドウを閉じながら、
「……ほどほどにねー」
と小さく呟いた。
フローラが嬉しそうに羽を揺らし、
「りぃっ♪」
カフレアの風が心地よく吹いていく。
次は……何をしようかな。




