44 装備更新のはずだった……
「そろそろ装備を新しくする」
キースのその一言で、私たちはカフレアの街に入ってからすぐ、防具屋巡りを始めた。
ジークも頷き、私もついでに新しい服でも見ようかな、なんて軽い気持ちでついていったのだけど――
その考えは一軒目で崩れ落ちた。
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店に入った瞬間、店主がこちらを見た途端、息を呑んだ。
「あ……あの……っ!? な、なぜ当店に……!」
ジークを見るや否や背筋を伸ばし、
キースを見た瞬間には目を見開き、手が震えている。
キースはいつもの無表情で、
「普通に装備を見に来ただけだ」
と淡々と言うのに、店主はかぶりを振って叫んだ。
「そ、そんな……! お二人にふさわしい品など、当店には……!」
普通でいいって言ってるのに。
キースは軽く眉を寄せたが、店主の動揺があまりにも激しくて、ほとんど追い出される形になった。
外に出ると私は肩をすくめる。
「……はい、想定通り」
「はぁ……」
「困りますね……ほんとに」
2人とも呆れてるね。
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次の店も、またその次の店も反応は同じだった。
店主たちは口を揃えて、
「お二人に見合う装備は当店には……!」
「とてもお出しできません……!」
と慌てふためき、商品を見せてすらくれない。
私は慣れたようにため息をついて、店を出るたびに言った。
「はいはい、どうせそうだと思ってた」
フローラが私の肩で「りぃ……」と呟く。
たぶん彼女も理解し始めている。
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途中、私も自分の装備を見てみたけど――
「アストラリスト用の服って……取り扱いあります?」
と聞いた瞬間、店主の顔が固まった。
「恐れ入ります……その装いは特別な造りになるため、当店では……。ご依頼となるため、お値段も相応で……」
提示された金額を見て、私はそっと視線を外した。
「無理。お財布が死んじゃう」
ジークが気遣うように微笑む。
「マリさんは今のままでも十分ですよ。無理はしないほうが」
キースも淡々と続ける。
「壊れていないなら問題ない」
……あなたたちと違って、前に出て戦ってないから壊れないだけだよ。
結局、私の装備更新は見送りになった。
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そんな中、六軒ほど見て回った頃。
最後の店主が、ふぅ……と深呼吸してから言った。
「……お二人ほどの方なら、防具ではなく“装い”で整える方が良いかもしれません」
「装い?」と私。
「はい。向こうの通りに、特別な仕立てをする店があります。
身につける者の力を引き出す……そんな服を作ると聞きます」
キースが少しだけ目を細めた。
「……興味深いな。場所を教えてくれ」
店主は地図を書いて渡してくれた。
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その店へ向かう途中、ジークがさらりと言った。
「服は少し高いですが……僕たちはβの頃から少しずつ蓄えてますから」
私は完全に固まった。
「……ちょっと待って。ベータ?あなたたち、ベータテスターだったの?」
キースが当然のように答える。
「そうだ。言っていなかったか?」
「言ってよそれ!!そりゃ強いし、知識量おかしいと思ってたけど……!」
ジークは困ったように笑った。
「気づいているものだと……」
気づくわけない。
フローラだけが「りぃ?」と首を傾げた。




