43 カフレアでもこれなの?
石畳の道を抜け、私たちはカフレアの巨大な城門へと歩いていった。
カフレアは商業の街らしく、エノラとは違う、どこかピリッとした緊張感がある。
その門の前に立つ二人の門番は、なぜか妙にそわそわしていた。
フローラが肩の上で首を傾げる。
「りぃ?」
「……気にしないでいいよ。たぶん、いつものやつ」
私が小声で言うと、フローラは納得したように羽を揺らした。
キースとジークは普段通り、無表情で門へ向かう。
その瞬間――門番たちの目が、ばちばちに見開かれた。
***
「し、失礼いたします!!」
門番1が急に直立し、ジークへ向けて声を張り上げた。
「こ、これは……ジーク様ではありませんか!!」
呼ばれ慣れているジークは、苦笑しつつ軽く敬礼を返す。
「こんにちは。通らせてもらいます」
「はっ!もちろんです!! 本物……本物だ……!」
門番2の目までキラキラし始める。
「ネリスの村での御稽古……我々の間でも噂になっておりまして……!」
ああ、やっぱり噂もう回ってたんだ。
動画のことはNPCには分からないはずだから、たぶん村のNPCから伝わってる口伝だ。
私は「あーはいはい」みたいな気持ちで聞き流す。
すると今度は、門番たちの視線がキースに向いた。
一瞬で空気が変わる。
門番2の背筋が音を立てて伸びた。
「……殿下……!」
門番1まで慌てて姿勢を正した。
「街の治安は我々が守ります!
殿下がご入城されるのであれば、護衛を――!」
キースは淡々と首を振る。
「街中で戦闘は起きない。不要だ」
即答。
なのに門番たちは、逆に尊敬の目を向けてきた。
「なんと……殿下は、どこまでも堂々と……!」
「護衛すら必要としない実力……さすがです……!」
フローラが私の耳元で小さく声を漏らす。
「りぃ……」
「うん、いつもの、だね」
私は慣れた調子で答える。
もう驚かない。驚いてたらキリがない。
***
そして次は――私たちの番らしい。
門番1が私を見て、一歩前へ。
「アストラリスト殿。そして……星霊様。殿下と騎士殿と共に旅をされているとは……」
フローラは得意げに胸を張った。
「りぃ!!」
「ども……」
別に私自身がすごいわけじゃないんだけどなぁ。
門番2が深く頭を下げる。
「皆さまのご武運を。カフレアはあなた方を歓迎いたします!」
三人で門をくぐると、背後から小声が聞こえた。
「本物の殿下と騎士殿が……! ついにカフレアに……!」
「明日から自慢し放題だな……!」
私は小さくため息を吐いた。
「ねぇキース……ああいうの、まだ続くのかな?」
「放っておけ」
ジークも苦笑しながら頷く。
「慣れましょう。僕ももう慣れましたから」
フローラは元気よく羽を震わせた。
「りぃっ!」
……まあ、平和ならいいか。
こうして、私たちはカフレアの街へ足を踏み入れた。




