42 結局私、何もしてない
ブルースライムキングが光の粒になって弾けると、
まるで緊張が一気に溶けたように静かな川辺が戻ってきた。
「……終わった、よね?」
「りぃーー!!」
フローラは勝利の舞いみたいに私の周りをぐるぐる飛んでいて、
カゲマルはカメラウィンドウを閉じたり開いたり、大興奮している。
「すげぇっす……!ジーク様、殿下……最強コンビっす……!!」
あの人、撮影しながらしっかり戦ってたの本当に意味わかんない。
忍者目指してるだけはあるのかな……?
そんなことを思っていると、
突然――ウィンドウがぽんっと現れた。
──────────
《討伐報酬を獲得しました》
・ブルースライムキングの核 ×1
・ブルースライムの粘体 ×5
・初級経験珠(中)×1
・所持金 +250G
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「おお……結構もらえた!」
核を触ろうとして、フローラがぴょこんと降りてきた。
「りっ!!」
「だめ。割れるから」
「り……ぃぃ……」
そこに、キースが近づいてくる。
「核は高値で売れる。扱いには気をつけろ」
「りぃ!」
急に姿勢正すじゃん。
すると、私の身体がふわっと軽くなったような感覚がした。
光が足元から立ち上り、身体全体を包み込む。
──────────
《レベルアップ!》
マリ Lv 2 → Lv 3
・ステータス上昇
・星霊術 熟練度+1
・フローラ信頼度+小
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「えっ、上がった……」
「りぃ!!!」
フローラは歓声みたいな鳴き声を上げて喜んでいる。
でも、私はちょっと複雑だった。
「……え、あれだけ何もしてないのにレベル上がっちゃったの……?」
ジークが優しい声で笑った。
「パーティーの経験値ですから。役割は役割ですよ」
「後衛職が前に出られても困る。妥当だ」
キースがそれ言う?
そのときだった。
「うおおおお……っ!!
マリさんのレベルアップ光――めちゃくちゃ綺麗に撮れてたっす!!!」
カゲマルがカメラウィンドウを掲げて大興奮している。
「別にここ撮らなくても良くない?」
「推しのレベルアップは記録しないと……!」
「いや私は推しじゃないでしょ?」
「自分はジーク様推しっすけどマリさん推しの為っす!」
「あ、そう」
どうでもいいし、疲れた。
***
少し落ち着いたところで、
キースがジークに声をかけた。
「……ジーク」
「はい」
「水場での戦いだが、お前は踏み込みで水を蹴りすぎだ。足元の抵抗が大きくなる。もっと浮かせて走れ」
ジークがはっとしたように息を飲む。
「……確かに、踏み込みが重かったです」
「それと――攻撃が直線的すぎる。水の反射で位置が読まれやすい。変化をつけろ」
「……っ。肝に銘じます」
キースは淡々と言うだけなのに、
ジークはどこか嬉しそうに背筋を伸ばしていた。
ほんと、兄弟なんだなぁって思う。
***
「さて、次の行動だが――」
キースが周囲を見渡して言う。
「次はカフレアに向かう。このペースなら日が暮れる前には着くだろう」
ジークが頷く。
「マリさん、歩けそうですか?」
「うん、大丈夫」
フローラが勢いよく飛び跳ねる。
「りぃーー!!」
カゲマルはウィンドウを閉じて、
「自分、編集しながらついていくっす!」
「器用だね?」
「マルチタスクは得意っす!」
ともあれ、討伐報酬ももらえたし、レベルも上がった。
冒険の準備は整ってきた気がする。
「じゃ、行こうか」
草原の風が心地よく吹き抜けていく。
…次は、どんな景色が見られるんだろう。




