表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星霊とまったり旅するアストレリア  作者: はちみつレモン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/61

35 お疲れ様だよ


小川の水音だけが、静かに、穏やかに響いていた。


戦いの熱気が抜けた空気の中で――

ジークは膝をついたまま、腹を押さえて苦しげに息を吸う。


「……っ……は……兄さんの……一撃は……さすがに……効きますね……」


声は弱いけれど、どこか満足げでもある。

痛いくせに、嬉しそうってどういうこと?


私は慌てて近づこうとしたけれど、キースが手だけで制した。


「まだ触れるな。痛みが引かないうちは無闇に動かすな」

「りぃ……」


フローラがしょんぼりしながら、ジークの周りを心配そうに飛ぶ。


ジークはそのフローラを見て、かすかに笑った。


「……心配かけますね……大丈夫……です……ふぅ……」


いや絶対大丈夫じゃない顔してるんだけど?


「ほら、水。飲める?」


私はインベントリから水筒を取り出して差し出す。


ジークは震える手でそれを受け取り、喉を潤すと、少しだけ呼吸が整った。


「……ありがとうございます、マリさん」


フローラもそっと近づき、ジークの指をちょんちょんと触る。


「りぃ……」

「ふふ……大丈夫ですよ、フローラ」


少し落ち着いてきたところで、キースは木陰に寄りかかり、腕を組んで目を閉じる。


「……落ち着くまで休め。痛みが残っているうちは判断が鈍る」

「分かっています……兄さん……」


私はというと、ほっとしたように隣の石に腰を下ろした。

さっきまでの緊張が一気に抜ける。


***


少し経って、ジークの呼吸もようやく落ち着いてきた。


「……兄さんの読みには、まだ追いつけませんね……」


ジークは腹の痛みを堪えながら、それでも悔しそうに、そしてどこか誇らしげに言った。


キースは静かに目を開け、ゆっくり立ち上がる。


「お前の剣筋は悪くない。ただ――焦りが出た時に上段に重心が乗る癖はまだ抜けていない。さっきもそうだ」

「……っ」

「読まれて当然だ」


ジークは唇をかみ、でもそれは悔しさより“認められたい”気持ちが勝っている顔だった。


私はそのやり取りを聞きながら、やっぱり兄弟の会話レベル高すぎる……と内心ついていけてない。


キースは続ける。


「だが――以前と比べれば、格段に速くなっていた。剣を交えた瞬間に分かった」


その一言に、ジークの目がわずかに揺れる。


驚いて、喜んで、信じられないような表情。


「……兄さん……本当に……?」

「あぁ。成長している。腕は鈍ってなかったな」

「……ありがとうございます……」


それは、嬉しさを必死に抑え込んだ、深い深い感情が詰まった声だった。


フローラまで「りぃ……」と控えめに喜んでいる。


私はその光景を見ながら、ぽつりと言う。


「ぶらこん……」


キースから否定の言葉が来なかったが無言の圧を感じ、思わず視線を逸らした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ