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星霊とまったり旅するアストレリア  作者: はちみつレモン


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33 真剣勝負3


ジークとキースの剣が激しくぶつかり合い、金属音が小川に反響する。


私は地面に座り、頬杖をつきながらその光景を眺めていた。


「……はぁ、すごいなぁ。なんか映画みたい」


フローラは隣で私の肩に乗ったり飛んだりしながら、落ち着かない様子で剣戟を追っている。


「りぃっ……!」


そんな時だった。


――コツ、コツ、コツ。


草を踏む小さな足音が近づいてくる。


振り返ると、そこには一人のプレイヤー。

シーフ装備の青年が、目をこれ以上ないほど見開いて固まっていた。


「えっ……あの……これ……まさか本物っすか……?」

「……あ、どうも」


私は手をひらりと上げて挨拶する。


シーフの青年は慌てて口を押さえ、震える声で言た。


「す、すみません!! その……つい……!」

「え?何?」


青年はごにょごにょと何か言いかけ、深々と頭を下げた。


「実は……村を出る前から……ずっと後を……ついてきてましたっす……!」

「あー、なるほどね。まぁ……よくあるやつだよね」

「え、許してくれるんっすか!?」

「いいよ、慣れてるからね」


フローラが「りぃ……」とため息みたいな声を出す。

なんでフローラにため息つかれてるのかな??


シーフの青年は気まずそうに視線を逸らした後、覚悟を決めたように口を開く。


「それで……その……動画……撮ってまして……! すみませんっす!!」

「動画?」

「は、はい!二人が戦ってるところ……すごすぎて……!」


あー、まあ、そりゃ撮りたくもなるかもしれない。


「ネットに投稿してもいいっすか……!?その……許可が……!」

「んー……さすがに私だけじゃ判断できないかな。本人たちに聞かないと」

「そうっすね……!」


そう言って笑った瞬間だった。


――空気が変わった。


背筋がぞわりとする。


「マリ」


振り向くと、キースが鋭い視線で私を呼んでいた。

いつもより少し大きな声。

明らかに“怒ってる時のトーン”だった。


「あ……えっと……」


やばい、見てなかったのバレた。


キースは一瞬だけ目元に怒気を走らせた。


その一瞬の隙を、ジークが――逃さなかった。


「兄さんッ!!」


水飛沫を上げながら、ジークが加速する。

視線はキースではなく、今まさに弱点になっていた“隙”に向けられている。


風が切れる音がした。


シャッ。


速い。

今までで一番速い。

剣筋が一瞬見えなくなったくらいだ。


キースの目が細まる。


「……ふん」


そして――その剣は、いとも簡単にいなされた。


刃と刃が触れる“はず”だった軌道。

キースは身体を最小限だけひねり、ジークの剣がすり抜けるようにして避けた。


「っ……!?」


体勢を崩したジークの鳩尾へ。


キースは剣の柄を、ためらいなく叩き込んだ。


ドッッ!!!!!


「……ッ、がは……っ!!」


ジークの体がくの字に折れ、衝撃が腹から全身に走ったようで、ジークの筋肉が一瞬びくりと痙攣し膝から崩れ落ちた。


私は思わず呟いた。


「うわーー、痛そ」


フローラも目を丸くしている。


「りぃ……!!!」


ジークは腹を押さえ、苦しそうに呼吸を整えていた。


「っ……はぁ……っ、ぁ……っ……」


鍛えられてる彼でも、これはかなり効いたみたい。


私の心臓がどきどきしてくる。


……キース、本気でいった?


いや、今まで急所を絶妙に外していたことに気づく。


本気で当てたらこうなるんだ。


すると――

地面に片膝をつき、腹を押さえながら呼吸を整えているジークが、苦しそうな声で口を開く。


「……っ……兄さん……っ、マリさんを……責めないで……ください……ぼ、僕は……大丈夫……ですから……」


痛みに耐えながらも、必死に私を庇ってくれている。


なんて優しい子なの……。


キースはそんな弟を一瞥して、私へ視線を戻す。


鋭い、けど感情の温度は低い。


「……見届けると言ったのは、お前だ」

「っ……ご、ごめんなさい……」


心臓が縮むような声。怒鳴らないのに怖い。


するとキースの視線が、私の隣で固まっているシーフの青年に向いた。


青年は肩をびくっと震わせ、一歩後ずさる。


キースは淡々と言い放った。


「……お前。どうせ最後まで見るつもりだったんだろう。ついでだ、そこにいろ」

「は、はいっす!!!」


キースは深く息をつき、剣を下ろした。


「続きは後だ。ジークを起こす」


ジークはなんとか顔を上げる。


「……相変わらず……容赦……ないですね……兄さん……」

「お前が隙を突くからだ」


そのやり取りを見て、私はようやく息を吐く。


この二人――

本気の勝負って、本当に命がけなんだな……


そして私は、ようやく気づいた。


あのキースでも、ジークの本気を“ぶつけられる相手”として認めてるんだ。


その証拠に、キースの拳は少し震えていた。


「……まだ終わっていない。マリ、次は必ず見ていろ」

「は、はい……」


フローラも慌てて胸を張った。


「りぃ!!」


小川の水音だけが静かに響く中――

二人の戦いは、まだ終わらなかった。

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