表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星霊とまったり旅するアストレリア  作者: はちみつレモン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/61

30 見たいって言ったのは私だけど……


ネリス川のそばで釣った魚を食べ、みんなでのんびり休んでいたとき――

私はふと思い出したように口を開いた。


「ねえ……模擬戦って、どんな感じだったの?」


ジークが少し驚いた顔をする。


「模擬戦、ですか?」

「うん。昔よくやってたんでしょ?話聞いてたら……見たくなっちゃって」


そう言った瞬間、

ジークの顔が「えっ、見たいんですか?」と完全に動揺に染まったのに対して――


キースは、薄く口角を上げた。


いたずらっぽい笑み。

“完全に乗り気のやつ” だ。


「最近は勉強ばかりで、あまり稽古してないだろう?」


ジークがピクリと反応する。


「兄さん、それは――」


キースは続ける。


「剣筋が鈍ってないか、確かめてやる」

「……っ!」


その言葉は挑発ではなく、

“本気で確かめる” という意味を含んでいる。


ジークは一瞬だけ迷って――

でも、すぐに目の奥の火が灯った。


「……分かりました。模擬戦、受けます」


うわぁ……完全にスイッチ入った顔だ。


私が軽率に“見たい”なんて言ってしまったばかりに、思ったより本格的な流れになってきた。


フローラはというと、


「りぃ……?」


と、若干不安そうに私の肩から覗いている。


***


キースがメニューを開き、PVP申請を送る。


《キース → ジーク 対人戦申請を行いました》


このゲームはPK不可だけど、対戦申請を双方が承認すれば“安全な模擬戦エリア”として成立する仕様らしい。


ジークもゆっくりと頷いて、承認ボタンを押す。


《対人戦が成立しました》


だが――ここで問題があった。


「兄さん、剣……魔法職なのに補正が入りませんよ?」

「構わん。元々これは俺の趣味だ」


メイジが剣を握るのも十分意味不明なのに、

補正なしで戦おうとするキースはもっと意味不明である。


そしてさらに驚くことが起きた。


ジークが自分のステータス画面を開き、

武器補正をひとつひとつオフにし始めた。


「ジーク?何してるの?」


私が声をかけると、彼はまっすぐ私を見る。


「……模擬戦ではなく、真剣でやりたいんです」


空気が変わった。


キースの目が細くなる。


「……なるほど。俺に本気で勝ちたいと」

「はい」


その声には震えがなく、

ただ真っすぐな気持ちだけが乗っていた。


キースはゆっくりと立ち上がる。


「いいだろう。なら――真剣勝負だ」


うわ……完全に“本気の兄”の顔だ。


正直、ちょっと怖い。


でも、目の奥にはどこか楽しそうな光もある。


***


場所を移すことになった。


ジークが提案したのは、

ネリス村の外れ。村の裏手にある、小川が流れる静かな場所。


観客もいない。

風の音と水の音だけが聞こえる。


“兄弟の戦いをするにはちょうど良い場所だ” とジークは言った。


確かに……ここなら邪魔も入らないし、

静かで緊張感がある。


試合開始前、キースがこちらを振り向いた。


その瞳が真っすぐ私を射抜く。


「……マリ、言い出したのはお前だろう」

「う……はい」

「最後まで見届けろ。途中で目をそらすな」

「え、そ、そんな怖いこと言わないで!」

「怖くない。普通だ」


いや普通じゃないよ!?

でも妙に説得力があって何も言い返せない。


フローラは私の肩で縮こまっている。


「りぃ……」


ジークは剣をゆっくり抜き、

夕陽を反射した刃がきらりと光る。


キースも静かに構えを取った。


……空気が張り詰める。


私の胸がどきどきし始めた。


うわ……これ、

本当にやばいの見ちゃうやつじゃない?


そして、

兄弟の“真剣勝負”が――静かに幕を開けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ