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星霊とまったり旅するアストレリア  作者: はちみつレモン


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22/61

21 行ってきます


インベントリを開いて、持ち物を一つずつ確認した。


料理、ポーション5本、調合道具、余った食材と調味料。

……まあ、これだけあれば何とかなるはず。


「よし。準備できた」


小さく呟くと、フローラがぱっと目の前に降りてきて、嬉しそうに羽を揺らした。


「りぃ!!」


これは完全に“早く行こう”の顔だ。


「急かさないで、自分のペースで冒険させて」

「りっ!」

「ほんとにわかってる?」


数日過ごしたエノラの街を、いよいよ出て冒険に向かうんだ――そう思うと、なんだか体が軽くなる。


「では、門のほうへ向かいましょうか」


ジークが穏やかに促し、キースは無言で歩き始める。

私はフローラと一緒にその後を追った。


***


朝のエノラは、潮風が柔らかくて好きだ。

露店の人たちの声、港のざわめき、遠くから聞こえる鐘の音――全部が“行ってらっしゃい”って言ってるみたい。


「なんか……出発前って特別な空気あるよね」

「緊張か?」

「いや……楽しみ?」


フローラがその言葉に反応して、私の髪の横でくるっと一回転した。


「りぃ!」

「近い近い」


そして――ついに門へ到着した。


見慣れた大きな木製の扉。

立っている門番NPCの二人も、数日でなんとなく顔を覚えてしまった。


門番①は、私たちを見るとすぐに表情を整えた。


特にジークを見た瞬間、背筋が完全に伸びる。


「本日もご武運を……ジーク様!」


……様ついてるよ。

ジークは困ってるのか慣れているのか分からない微笑みで、落ち着いて敬礼を返した。


「ありがとうございます。あなたも良い一日を」


その一言だけで、門番NPCはほわぁ……っと顔を緩ませた。


やっぱりジークは罪深い。


次に門番②の視線がキースへ向けられる。

途端に緊張感が一段階上がった。


「……殿下、旅路のご安全を。門の者一同、陰ながら――」

「殿下ではない」


キースが即答したけど、門番はぴたりと止まった姿勢のまま動かない。

絶対信じてない顔だ。


……まあ、分からなくもないけど。


そして門番①が、今度は私に向き直った。


「マリ殿。それから星霊様。どうかご無事で。またエノラにお戻りください」


「……うん。また帰ってくるよ」


フローラも嬉しそうに「りぃ♪」と返事した。


小さなお別れの挨拶なのに、不思議と胸の奥があったかくなる。


***


門をくぐる直前、私は思わず街を振り返った。


港の風景も、石畳の道も、人の声も――もう“見慣れていた”はずの景色が、今日は少し特別に見える。


「……なんか、ちょっとだけ寂しいね」


ぽつりと言うと、キースが前を向いたまま答えた。


「帰る場所ができたということだ」


ジークも柔らかい声で続ける。


「また戻ってきましょう。いつでも」


フローラは私の手を軽く引っ張る。


「りぃっ!」


行こうって顔してる。


「……そうだね。行こうか」


扉を抜けると、エノラ草原の風がふわりと頬を撫でた。

背後で門が静かに閉まる音がして、胸の中でなにかが「旅モード」に切り替わる。


「……行ってきます、エノラ」


小さく呟くと、フローラが嬉しそうに羽を震わせた。


「りぃーー!!」


私たちの、最初の冒険が始まった。

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