20 冒険の準備完了かな
部屋に戻ると、私はインベントリを開き、今日集めた薬草の束を並べた。
「よし……今日はポーション4本、ちゃんと仕上げるよ」
宣言した瞬間、フローラが目の前でふわっと浮き、羽をぱたぱた揺らした。
「りぃ!!」
分かりやすいなぁほんとに。
もしかして調合の時間が好きなのかな?
「りぃっ♪」
あ、絶対好きだわこれ。
私は薬草をまとめていた布を開き、必要量ずつ並べる。
キースが横目で見ながら言う。
「分量はこの前のより多いな。品質も悪くない」
「今日の方が採取ポイント多かったからね。4本分はいけるでしょ」
ジークは静かに頷く。
「落ち着いて作業すれば問題なさそうですね」
フローラは薬草の近くに降りて、ぺしぺし触っては満足そうにうなずく。
「りっ!」
鑑定士か何かかな?
***
乳鉢を取り出し、薬草を小さくちぎって入れる。
ごり、ごり……
すり潰すたびに淡い香りが立ちのぼる。
「りぃ〜……」
フローラが幸福のため息を吐いてて笑った。
「食べ物じゃないよ?薬だよ?」
「りぃっ」
「そんなむくれなくても」
ある程度粉状になったところで、鍋に水と一緒に投入する。
キースが火力をちらっと見てくる。
「火が強い。調整しろ」
「う……わかってるわよ」
ジークが優しい声で補足する。
「煮込みの段階は繊細ですからね。焦らずいきましょう」
フローラは鍋の上をふわふわ漂って、なんとなく監督している気分らしい。
「りぃ!」
はいはい監督さん、落ちないでね。
***
十分煮出せたところで火を止め、小瓶に移す。
《初級ポーション ×1 を作成しました》
「一本目、よし」
フローラが嬉しそうに私の頬に寄り添ってくる。
「りぃ〜♪」
「一本でそんな喜ばれたらプレッシャーなんだけど……」
二本目も同じ流れで進める。
慣れてるから、手元の動きも昨日よりスムーズ。
《初級ポーション ×1 を作成しました》
「二本目も完成……っと」
キースが状態を確認しながら言う。
「色も濃度も安定している。この前より上達してるな」
「理科の実験みたいで好きなんだー」
ジークも柔らかく笑う。
「経験が活きてますね」
フローラは胸を張って「りっ!」と鳴いた。
自分が褒められたわけでもないのに、なぜ得意げなのか。
***
三本目を作ろうとしたとき、乳鉢がほんの少し滑りかけた。
「あっ──」
ジークがそっと手で押さえてくれる。
「大丈夫ですか?」
「ありがと……焦った……」
キースは静かに言う。
「集中力が切れる頃だ。少し休んでもいい」
「まだいける」
「りぃ!」
フローラも応援モード。
そのまま続けて、三本目を完成させる。
《初級ポーション ×1 を作成しました》
「ふぅ……あと一本」
四本目は、なんとなく慣れで手が動く。
薬草をちぎって、潰して、煮出して──
フローラは鍋の上でくるくる回りながら嬉しそうに香りを吸う。
「りぃぃ〜……」
「絶対これ好きでしょ……」
「りぃっ!」
やっぱりね。
最後の一本を小瓶に注ぐ。
《初級ポーション ×1 を作成しました》
《調合スキルの熟練度が上昇しました(+1)》
《調合スキルが Lv2 に上がりました》
《品質成功率がわずかに上昇》
「……よしっ!4本、完成!」
テーブルに並べると、ちょっと達成感がすごい。
スキルレベルも上がったしね。
キースは一本ずつ手に取って確認する。
「いい出来だ。冒険に使うには十分」
ジークは穏やかに微笑む。
「これで準備は整いましたね。早速明日から出発ですか?」
「そうね、早くこの世界を見て回りたくなったわ」
フローラが嬉しそうに羽を震わせる。
「りぃ!!」
だって、この世界がどんな世界なのか興味が湧いたんだもの。




