19 初戦闘
「さて……今日は薬草集め、頑張りましょうか」
そう宣言した瞬間、フローラが目の前でぱぁっと光った。
「りぃ!!」
嬉しすぎて、私の顔の前すれすれを飛ぶのはやめてほしい。
危ないから。
「ポーション4瓶分ね。それだけ集まったら帰ろう」
「りぃっ!」
元気なのは良いけど、テンションの上がり方が毎回すごい。
キースは草原の遠くを見ながら、淡々と告げた。
「……前方三十メートル。茂みの揺れが不自然だ。小型モンスターが三体はいる」
ジークは視線を走らせると、静かに頷いた。
「では右側のルートを通りましょう。ゆるやかですが安全です」
なんでこの人たち、こんなに慣れてんの?
「頼りにしてますよ、お二人さん」
「あぁ」「ええ、任せてください」
***
茂みのそばにしゃがみ込むと、薬草の葉が揺れていた。
そっと触れるだけでウィンドウがぽんっと開く。
《薬草(品質:普通)を採取しました》
「よし、一つ目」
フローラがすぐ隣に降りてきて、ぺしぺしと葉っぱを叩いている。
「りぃ……!」
「そこ?そこにあるの?」
案の定、そこにも薬草があった。
「さすがフローラ。いい目をしてるね」
「りっ!」
誇らしげに胸を張る。
かわいい。
キースは少し離れた場所で周囲を見回しながら言った。
「採取は順調だな。あと三瓶分は確実に集まる」
ジークは柔らかく微笑む。
「マリさん、無理に急がず。ゆっくりで大丈夫ですよ」
「うん、ありがとう」
二人がいるだけで、本当にのんびり採取に集中できる。
***
ある程度集まった頃、
フローラが急に空中でピタッと止まり、羽を震わせた。
「りっ……!」
その動きに、キースがすぐ反応する。
「来るぞ。三体。正面からだ」
ジークは剣に触れつつ、私に視線を向ける。
「マリさん、後ろへ」
私は頷いて一歩下がる。
すると、草むらからスライムのようなモンスターが三体ほど転がり出てきた。
そこまで強そうではない。
けれど、初めての“まともな戦闘”だ。
「りぃ!!」
フローラがふわりと前へ飛び込み、
迫ってきたスライムの攻撃をひらりと避けた。
……動き、速くない?……あぁ、星霊術か。
星霊術は星霊の能力にボーナスがついたり、精霊契約の成功率が上昇するスキル。
フローラが小さな手を前に向けると、
花びらが集まり、ぎゅっと凝縮されて一つの花弾になった。
淡い光を帯びた花の粒が、弾丸のようにスライムへと飛ぶ。
ぱしゅっ!
花びらが弾けると同時に、スライムが小さく砕けた。
え、強。
ジークが横で微笑む。
「フローラらしい攻撃ですね。花の星霊らしくて綺麗です」
キースも静かに頷いた。
「威力も悪くない」
二体目のスライムが飛びかかろうとした瞬間、
フローラはひらりと宙を舞い、再び花弾を形成する。
淡い桃色の弾丸が一直線に走り──
二体目も弾け飛ぶ。
最後の一体が突っ込んできて、私が声を上げるより早く、
フローラはふわりと上昇し、上空から花びらの雨のように散弾状の花弾を落とした。
ぱあっと光が広がり、三体目も消滅した。
「りぃ!」
誇らしげに胸を張って、私の周りをくるりと一周。
「お疲れフローラ」
「りぃ♪」
ジークがスライムの消滅した場所を確認しながら言った。
「星霊術のレベルが低くても、この補助は大きいですね。マリさんに向いているスキルですよ」
キースは腰に手を当て、冷静に評価する。
「特に回避特化だな。フローラの動きが滑らかだ」
「りぃー!」
嬉しそうに私の腕に抱きついてくる。
その瞬間、ウィンドウが開いた。
《星霊術の熟練度が上昇しました(+1)》
《フローラの潜在能力引き出し率がわずかに上昇》
「わぉ」
星霊術って実はとても重要なスキルだったんだね。
その後、薬草を無事に目標量まで集めて、私たちはエノラへ戻ることにした。




