16 冒険したい
エノラの空に、澄んだアナウンスが流れた。
『ワールドアナウンスです。第4の村ボレアナが解放されました。達成プレイヤーの皆様、おめでとうございます』
街中がざわっと揺れるように騒がしくなる。
「もう第4エリアまで行ってるのかぁ」
何日か遊んでみて分かったけど、エリア解放ってそこそこ大変だ。
そんなに簡単に進めるもんなのかな……すごいな。
私はフローラがふわふわ飛んでいるのを眺めながら、ぽつりと呟いた。
「そろそろ私たちも冒険してみようかなぁ……」
昨日は買い物して、調合して、街を見て回って。
スローライフが楽しかったけど、そろそろ外にも出たい。
その一言に、フローラが空中で大きく跳ねた。
「りぃーーー!!」
嬉しいのは分かった。でも近い。顔の前来ないで。
そのとき、後ろから落ち着いた声。
「マリ」
キースが軽く視線を向けてくる。
「……今の状態で外へ行くつもりなんだな?」
「え?うん、まあ……そろそろ行けるかなって」
ジークも穏やかに口を開く。
「マリさん、装備は……まだ何も揃えていませんよね?」
「……う」
確かに。
調合と料理の道具だけでほぼ全資産使った気がする。
キースが淡々と言葉を続けた。
「武器はなし、防具は初期装備。ポーションは一本だ」
事実を並べられると痛すぎる。
「それは……その……これから……」
「気持ちだけで冒険はできない」
キースは冷たくも厳しくもない。
ただ“事実”を述べているだけの声。
ジークも続く。
「前に草原でお散歩した時のようにはいきませんよ。本格的に冒険となると、準備が必要です」
フローラが私の肩をちょんちょん、とつついた。
「り……?」
「分かってるわよ……」
私の心の中も、ほぼ同じ意見だった。
しっかり準備してから冒険したほうが確かに安全だ。
「じゃあ……冒険の準備をして、準備できたら冒険しようかな」
言うと、フローラは嬉しすぎて空でくるくる踊りまわった。
「りぃぃ!!」
「焦る必要はない」
「準備の時間も、冒険の一部ですからね」
キースとジークが落ち着いた声で言うと、
なんかちゃんと冒険者みたいな気分になる。
「でも私、お金ほぼ無いから装備は初期装備のままかな」
「そうだな」
「しっかり護衛しますのでマリさんは後ろからサポートしてくれればそれで十分ですよ」
じゃあ、やること料理と、4瓶あるから4瓶分のポーション作る材料集めとポーション作らないと。
やることが多い。
考えていたらフローラは私の前へ飛び、くるっと振り返って手招きする。
「りっ!」
「急かさないの」
街の通りを抜けていく風がすこしひんやりしていて、気持ちいい。
さて、冒険の準備を始めましょうか。




