14 現実より財布にやさしくない世界
称号騒ぎで街がざわざわしている中、私はふと思いついた。
「そろそろ調合、始めてみようかなぁ……」
「りぃ?」
「お薬作るの」
「りぃ」
なるほどーみたいな顔してる。
ほんとに分かってる?
キースもジークもついてきてくれて、私たちは港通りの奥にある調剤店へ向かった。
***
《ミルガン調剤店 初心者歓迎》
扉を開けた瞬間、乾燥ハーブの優しい香りがふわっと広がった。
「落ち着く……」
店主NPCが穏やかに微笑む。
「初めての調合かい?必要な物があるなら案内するよ」
「初心者セットってありますか?」
「もちろん。これだよ」
カウンターに置かれた箱には、必要そうな道具が一式そろっている。
《初心者調合セット 300G》
「……まあ、こんなものだよね」
次に店主が別の棚から、ずっしりした乳鉢を取り出す。
「これもあると便利だよ。質がいいから長く使える」
《乳鉢 200G》
そして──
「調合には瓶が必須だからね。最低でも5本持っておくといい」
《小瓶×5 100G》
合計額:
300G + 200G + 100G = 600G
初期所持金は1500G。
残りは──900G。
「……あれ?調合するのにそんなに道具いるの?……」
フローラが私の袖をつんつん引っ張る。
「りぃ?」
「だ、大丈夫。ポーション作ってあればいいから、すぐ稼げる……はず」
ジークが落ち着いた声で言う。
「生産は初期投資が必要ですからね。長く遊べば必ず回収できますよ」
キースは初心者調合セットを取ると私に渡す。
「迷うなら買った方がいい。本職のファーマーシストより作ったポーションの効果や品質は落ちるが、作る楽しさは十分あるはず」
……それは確かにそうなんだけど。
なんでこの人、こういうとき説得が上手いの?
私は観念した。
『600Gを支払いました』
ウィンドウに残高が表示される。
残り:900G
「……現実よりお金使うの早くない……?」
「良い買い物をしたね。これでしばらくは困らないはずだ」
ジークが袋を持つのを手伝いながら言う。
「調合、楽しみですね」
「……そうね」
キースは外を確認しながら言う。
「次は食料の確保だな」
「え、もう買い物?まだ買うの?お金……」
「当然だ。冒険する以上、腹が減っては何もできない。確かマリは料理のスキルを持っていたはず、調理済みのものではなく材料を買うといい」
「よく覚えてるわね」
「記憶力には自信がある。料理のスキルレベルを上げるついでにフローラの好みも探すと喜ぶんじゃないか?」
キースがフローラをチラッと見るとキースの言葉を聞いたフローラは「りぃ!」と賛同して空をくるくる飛ぶ。
……あぁ、もう。
この勢いだと、材料沢山買う羽目になるじゃない。
調理済みのご飯よりお金かかりそう。
現実より財布にやさしくない世界……!
でも、なんだかんだ楽しい。
「……よし、決めた!今日は絶対むだ遣いしない!」
「楽しみだな」
「きっと大丈夫ですよ」
「りぃ!」
「いや、信じてないでしょ……?」




