幕間:最強メイド部隊、坊ちゃまに挑む!
坊ちゃま、メイド部隊との訓練をお願いできますか?」
リュシアが優雅に一礼した。
「訓練?」
「はい。士気を高めるため、坊ちゃまと模擬戦を」
「……別に構わないが、何か狙いがあるな」
「ふふ、さすが坊ちゃま。では、こういうルールにしましょう」
リュシアが微笑んだ。
「――坊ちゃまに“一撃”でも入れられたら、その者の勝ち」
「……なるほど。で、勝ったら何だ」
「ご褒美を、とのことです」
「ご褒美?」
俺が首を傾げると、背後でざわめきが起きた。
「坊ちゃまの手料理!」「お散歩デート!」「膝枕希望!」
「……お前ら」
メイドたちの目が、獣のように光っていた。
嫌な予感しかしない。
⸻
訓練場に立った俺の前に、十名のメイドが整列する。
黒と白のメイド服の下に、武器を仕込んだ影。
――双剣、投げナイフ、槍、鞭、魔導銃まであるのかよ。
「全員、本気でかかってこい」
俺が剣を抜いた瞬間、空気が張り詰めた。
「坊ちゃま、一撃だけでいいんですよね?」
「……ああ」
「なら、いきますっ!」
ヒュッ!
第一撃。投げナイフが音を立てて飛ぶ。
俺は片手で弾き、振り返りざまに双剣の攻撃を受け流す。
「おおっ、やっぱ速ぇ!」
「坊ちゃまカッコいい……!」
「集中しろ!」
俺の一言で全員が気を引き締める。
⸻
鞭が空を裂き、魔導弾が閃光を放つ。
槍が突き、影からナイフが襲う。
だが――俺の体は誰よりも速い。
「甘い」
一歩、二歩。剣の柄でナイフを弾き、槍を捻じ伏せ、鞭を掴んで逆に引き倒す。
「きゃっ……!」
倒れたメイドを抱え、優しく地面に置く。
「怪我はないな」
「は、はいぃ……///」
「気を抜くな!」
別のメイドの声に、彼女は顔を真っ赤にして立ち上がった。
⸻
「では――奥義、いきます!」
リュシアが号令をかけた瞬間、全員が一斉に動いた。
魔導銃の弾幕、ナイフの雨、槍と剣の連携。
「おお、面白いじゃねぇか」
俺は魔力を纏い、剣を振るう。
バリィィィンッ!
雷光が走り、すべての攻撃を弾き飛ばした。
次の瞬間、俺は全員の背後を取っていた。
「――終了だ」
剣を肩に担ぎ、振り返る。
十名のメイドが呆然と立ち尽くしていた。
⸻
「さすが……坊ちゃま……」
リュシアが笑みを浮かべる。
「完敗です。ですが、ご褒美の件は――」
「……全員分、か?」
「もちろんです」
「……地獄だ」
俺は天を仰いだ。
――こうして、地獄の“メイドおもてなしデー”が始まることになる。




