表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/13

姫と辺境の晩餐

「……ここは?」

柔らかな声に振り向くと、ベッドの上でエリシア姫が身を起こしていた。

薄い寝間着姿、解けた金髪が肩に流れ、頬はまだ青ざめている。

――ヤバい。美しさが反則級だ。


「ここはガルデン辺境伯領。命は助かった」

俺が答えると、姫はわずかに息を吐き、胸を押さえた。

「……そう、ですか……」

そのまま視線を落とす。

だが、腹の音が――ぐぅぅぅ……。

……おい、今の音、絶対聞こえたぞ。


「腹、減ってるだろ?」

俺は笑って、厨房に向かった。



「というわけで、アルノ様が腕を振るいます!」

「おお、出た、アルノ様の料理ショー!」

メイド隊が目を輝かせる中、俺は鍋を火にかけ、魔獣肉を取り出す。

素材はブラックファングの上質な部位。

下処理して香草と塩で揉み込み、魔石オーブンで焼き上げる。

仕上げに、俺の“転生チートスパイス”をひと振り。

ジュワァァァ……!

肉汁が弾け、芳醇な香りが厨房を満たした。

「ぐっ……また飯テロが始まった……!」

リュシアが悶絶しながら、鼻を押さえる。



「どうぞ」

俺は皿を姫の前に置いた。

分厚いロースト肉、付け合わせの香草ポテト、スープ。

見た目は高級レストラン、匂いは……破壊力抜群。

姫は恐る恐るフォークを手に取り、一口――。


「……っ……おいしい……!」

瞳が大きく見開かれ、頬がほんのり赤く染まる。

「なに、この……お肉……とろける……」

小さな声で呟き、次の瞬間には夢中で食べ始めた。

――やばい、ギャップ萌えってこういうことか。

普段は気高い姫様が、子犬みたいに幸せそうな顔で肉を頬張ってるとか……反則。


「アルノ様、姫にこんな料理を出すなんて……ずるい」

リュシアがじと目で睨んでくる。

「お前らも後で食わせてやるよ」

「ほんとですか!?」「やったー!」

メイド隊が歓声を上げる。……戦場の殺し屋集団とは思えないテンションだな。



「……ありがとう。本当に、ありがとう……」

食後、姫は深く頭を下げた。

「いいよ。……で、詳しく教えてくれないか? 王都で何が起きたか」

姫の表情が曇る。

「……数週間前、魔獣の大群が突如として国境を突破しました。

 そして、その混乱に乗じて……大貴族たちが反旗を翻したのです」

「裏切り、か」

「ええ。内側から扉を開けられ、王都は……炎に包まれました」

声が震える。

「父と兄は……もう」

姫の目に涙が滲む。


――胸が痛む。でも、ここで慰めるだけじゃダメだ。

「……奪還する」

俺は低く言った。

姫が顔を上げる。

「……え?」

「このままじゃ、ガルデンも危ない。

 守るだけじゃ生き残れない。取り返すんだ、王都を」

「……無茶です」

姫は即座に否定した。

「相手は魔獣の軍勢と、裏切り貴族の連合。

 辺境の軍だけで勝てるわけが――」

「勝てるさ」

俺は笑った。

「俺と、この領地の力を舐めるなよ」

その瞬間、姫の瞳が揺れた。

――ちょっとだけ、俺を信じた。そんな顔だった。



「アルノ坊ちゃま」

執務室に戻ると、バルドが報告を持ってきた。

「東方の商隊が国境を越えたとのこと。

 しかも――妙な武具を携えております」

「妙な武具?」

「はい、鉄でできた筒状の器具。火薬ではなく……魔力で弾を飛ばすとか」

――魔導銃、か?

俺はニヤリと笑った。

「面白いな。会ってみたい。

 ……東方、か」

脳裏に、神界で聞いた“もう一人の転生者”の言葉がよぎる。

『お前以外にも、数人送り込んだ』

――もしかして、そいつか?


外の風が一層冷たくなった気がした。

これから動き出す。

俺の戦いも、世界の命運も。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ