猫が死にました
猫が死にました。数か月前のことです。
GWに実家へ帰省して、彼がいないことを実感しました。
ただ、そこで不思議な体験をしました。
事あるごとに、彼の鳴き声や毛並みを感じるのです。
名前を呼ぶと、彼が近づく足音を感じました。
夕食を食べていると、足元を通る気がしました。
彼が「いない」という事実が、かえって「いる」という実感を私に与えるのです。
私はそこに、ひとつの矛盾を見いだしました。
安直に言えば、それは幽霊なのかもしれません。
けれどその答えでは、満足できませんでした。
幽霊が「いる」ことも「いない」ことも、証明できないからです。
考え続けて、ようやく気づきました。
人間は、「差異」を強く認識するのだと。
静かな森で、池に石を投げ込めば、その空間にいっそう音が響くように——
あの家には、彼の形をした沈黙が響いていました。
それは、私の記憶が輪郭付けた空白です。
形のない肖像画です。
私は、この空白を一生抱えて生きたい。