大きな屋敷
スクリズに連れてこられたのは、とある大きな屋敷であった。
「で、でっけぇ...」
一菜は、屋敷の前でそう漏らす
「確かに、この街ではこの屋敷が1番大きいね。」
と、スクリズは言う
「一菜さん!早く行きましょ!」
そう言われ、スクリズとセリヌと一緒に、屋敷の扉から中へと入る
「僕は、一菜さんと行くから、セリヌはいつもの部屋で。」
「うん!」
そうして、階段を上り、セリヌは2階から長い廊下の方へ歩き出し、一菜とスクリズは共に4階まで上がり、廊下を左へと進む
「あの...屋敷デカイのは分かってたんですけど...何階建てなんですか...?」
一菜は息を切らし、長い廊下を歩きながらそう聞いてみる
「この屋敷は4階建てだよ。だから、ここが最上階さ。」
そうして、廊下の突き当たり左の扉を開ける
「さ、入って」
そう促され、中へと入る。中は、部屋の奥側中央にテーブルと椅子があり、その手前側に横長のソファーが二つ向かい合い、その中心にそのソファーと同じ長さの机。その両ソファー背面の壁側には、沢山の書物が置いてある本棚があった。
「失礼します...」
スクリズは中へと入らず、開いた扉の外から話し掛ける
「適当に座っててよ。少ししたら戻る。」
「分かりました」
扉が閉まり、スクリズの足音が遠ざかっていく。一菜はソファーへと座り、待機する。待機中、一菜は思う
...異世界転生系でこの展開って、大抵良くないことが起こる気がするんだが...まあ、しばらくこの部屋を漁るか...バレないように...
と、思ったが...なにか折角街の中へと入れてもらったのに、悪いなと思いやめた。
ギィィと、扉が開く音がした。
「やぁ、待たせたね。」
そう言って、一人の水色の水晶を持った顔をローブで隠す女性と、スクリズが部屋の中へと入り、2人は一菜と向かい合って座る。占い師は、机の上に水晶を置く。
「この方は、占い師。まぁ、今回は占いというよりかは、君の適正属性を測るために呼んだんだけどね。」
スクリズがそう言うと、占い師は立ち上がり、一菜の手を握る
「本日は、よろしくお願い致します。」
「こ、こちらこそ...」
一菜は多少の動揺はしたものの、占い師にそう返した
「それでは早速、始めさせて頂きますね」
占い師は、握っている手をそのまま机の上の水晶へと置かせる
「彼の者の深淵を見定めたまえ」
その瞬間、水晶の色が白色へと変化して、しばらくすると色が戻った
「...白?これはなんの属性の適性が...?」
スクリズは占い師に問う
「...いえ、これは私も見たことがないので分かりません。多分...適性がない...?のでしょうか...」
占い師は戸惑いながらもスクリズの問いに対して答えた
「いや、そもそもなんで俺は急にこんなことをする事に...?」
そう言うと、スクリズは答える
「転生者はこれまでも多々いてね。まずは適正の属性を調べるようにっていう言いつけが僕のこの街の掟みたいな感じなんだ。」
「でも、そうしたら転生者だって言い張った他国のスパイがこの街に来たらどうするんだ?その後にこの街に滞在させて知られたくない情報を知られる可能性とか、最悪この街を荒らされる可能性だってあるだろ?」
とスクリズに疑問を投げかける。話している間も、スクリズは頷いていた。
「その点については大丈夫さ。僕の家系には、代々嘘を見抜く加護があるんだ。だから、見抜けない嘘など、そうそう無いからね。」
「そうそうなのか...信用ならないな...」
そう言うと占い師が話し始める
「嘘を見抜く「真実の加護」。それを誤魔化せるのは、「虚構」ですね。虚構持ちなんて中々いないですが。」
「正解」
と、スクリズは指を鳴らす
「そうなんだな」
「加護は能才より弱く、能才は能力よりも弱く、能力は権能より弱く、権能は天性よりも弱い。まあそれは基本的には、だが。同じ炎でも能才は天性には基本勝てない。」
ややこしすぎて、一菜はポカーンとしていたが、何となく理解をすることが出来た。
「つまり、天性ってのが1番上で、加護は1番下なのか。」
少しの間悩んだ後、スクリズは答える
「あぁ、まあそんなところだ。加護は別枠に入れるべきなのだろうが...暫くはその認識で大丈夫だと思う。」
スクリズの言葉に引っ掛かりを感じつつも、納得する
「そ、そうなのか...?...待てよ、さっきの話だと能力とか俺にもある可能性があるのか?」
少しの興味からそう聞いてみる
「あぁ、あるとは思う。そういうのは知りたいと思えば知れると思う。それか...そういう系統の魔法を使用するかだな」
あぁ〜知りたいな〜...と、そう念じてみるが、知ることは出来ない。
「それじゃ、どこかで能力鑑定してもらうしかないのかな...」
と一菜は呟いた。
「無理だったか...まあ、そのうち分かるさ。それじゃあ、占い師さん。今日はありがとう。それじゃあね」
スクリズがそう言うと、占い師は水晶を持ち出し部屋の外へと出ていった
「それじゃあ、本題へ移るとしようか。」
とスクリズは言い、真剣な顔になる
「え、えっと...なにか?」
「君は、異世界の転生者なんだろう?それなら...技術提供か、転生した原因を話してくれはしないだろうか?」