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爆発。昂り。

「工場でもテロ事件が起きたらしいわよ?生存者は1人だけ。その他の人たちは爆発により木っ端微塵となって、工場は火の海となって3年は稼働できないらしいわよ。」

「最近物騒ねぇ...」


...一菜が異邦の地に飛ばされる3日前



...もう、生きている価値なんてない。


「おい、そこのお前。早く動け!」


...薄暗く日の当たらない、劣悪な工場で荷物を持った、よれよれの薄い服を着た虎のような耳を生やした女性は、髭を生やし、目の焦点の合っていない男性に鞭で叩かれる


「イッッ...ぐぅ...」


唇を噛み締めて、痛みに耐える。


「それとも...もっと別の利用方法で利用した方がいいのか?」


男性は鼻の下を伸ばし、女性の体をジロジロ見ながらそう言う


「...この仕事で頑張ります...」


つまらなそうな顔をしながら、男は鞭で叩き言う


「ケッ、つまらねえ獣人だ。戸惑いも動揺もしなけりゃ、仕事への意欲も感じられねぇ返答ばかりしやがる。さっさと行け!」


そう言い放った後に鞭でもう一度叩き、鞭で叩かれた女性は別の場所へと歩き出す。暫く歩き時間が経つと、女性の悲鳴が聞こえてくる。


...また、鞭で叩かれてるのかな...もう、痛いよ。辛いよ。嫌だよ。


「と、そんなことを思うあなたに!ほい!って、もうやっちゃってるのか。」


「...え?」


後ろからそんな声が聞こえた後その一瞬、視界の端に先程鞭で叩いてきた男性の生首が見えた。途端、激しい爆発音と共に、目の前の景色は黒煙に包まれる。女性は軽くむせて咳をする。黒煙が立ち昇り、視界が開けてくる。火の海が辺り一面に広がる。その光景を見た女性は、恐怖に怯えた表情...などではなく。


「あははははははは、はははははははははははははははははははははははは!いいね君、最っ高!今俺がいて、この爆発が起きて、そんな表情できるなんて!!!!」


「あ、いや、ごめんなさい。どうしても、このクソみたいな、屈辱的な環境から抜け出せることに、どうしても喜びを感じてしまって。」


怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い。死ぬ。私も殺される。あの一瞬視界の端に写ったもの。それはあの男だ、あの男だ。私も。死ぬんだ。死にたくないなぁぁ...でも、それ以上に」


女性は不敵な笑みを浮かべていた。


「あんなの、死ねばよかったんだ。死ねば。死んでしまえばいい!そんな人間なんて、なんて、そんな人間なんて!!!」


「あぁ!俺はなんて幸運なんだろうか、こんなにイカれていて、こんなにもやばい、こんなにも恐ろしい。こんなにも人間をしているこいつに俺は今!昂りを抑えられない!どれだけ嫌いでも、人間が死んで自業自得と思う人間はいる!それでも!どんな悪人でも数ミリの死という感情が心を侵食し、繋がるんだ!私も死ぬ!俺も!僕も!我も誰もかもみんなみんなみんな!!...死に、死に直面したお前は、どう頑張っても恐怖には抗えない!どれだけ嫌いな奴が死んでも、身近に死の原因はいるのだからそう!それが俺だ。でも、お前は、お前は恐怖を抱きつつ、そんな状況下でも笑っていられる!馬鹿か?馬鹿なのかお前はぁ!!!!!!!...ふぅ...さて、そんなお前にプレゼントだ。」


そう言って、女性の目の前へと行き、手を差し伸べる。その姿は、青年の姿をした男性で、非常に能天気そうな笑みを浮かべていた。


「私、人間じゃないんですけど。」


「知ってるよ、そんなこと。君は獣人だろう?...そうそう、プレゼントの内容。俺はね、「爆発の権能」持ってるんだよね。あーそうだな、権能程度じゃ、ここまでの威力は相当な魔力がないと出せないんだよ?でも、運良く俺にはさ、「天性の元素生成」があるからさ、それで超威力高めた爆発起こせちゃうって訳よ。そんな俺の加護を一部プレゼント!って訳。どう?」


「か...ご...加護?」


「そう、爆発の加護と元素生成の加護。俺に比べたら劣るかもだけど、威力は充分あると思うからさ!これで好きなやつ爆破しちゃって!あ、そうだ、俺の名前はトドロキ?って名前らしい。よろしくな!お前は?」


そう名を名乗り、問いかける姿に、少し違和感を覚えるが、女性は手を取り、答える


「わ、私の名前...ニロファ...」


「二オファ!よろしく!君がこれからどうなるか楽しみだよ。えっとー、もうそろそろここから逃げないと国の冒険者達とか騎士団の人が来るから行くけど、どう?俺とは逃げない?」


少し怯えながらも、女性は首を横に振る。


「そっか、まあ久しぶりの自由だし、楽しみなよ!それじゃあね!」


そう言った瞬間、トドロキと名乗る青年の足元は爆発し、遥か上空へと飛んでいってしまう


「これで今から私も...じゆ...」


トドロキと名乗る男は上空から工場を見ながら呟く


「ニオファも馬鹿だなー。あんな所にいたら、一酸化炭素中毒で倒れるに決まってるのに。助けが早く来ない限り、あの子は死ぬな。それと...俺の正体も教えちゃったけど、いいよね。面白かったし!それに、保険もちゃんと用意はしてあるつもりだしねーっと。さ、早くもーどろ。」






...ここは、どこ?


「お、やっと気が付きましたか。」


ニロファの目に映るのは、席に座り本を読んだ、とても優しそうで、温厚そうな年老いた男性だった。


「あんな工場で、倒れていた子供...噂には聞いていたが、やはりあの工場では獣人の子供を奴隷のように扱っていたのか。全く、私の後継者は一体何をしているのだか...」


「...?...あ、」


その時、家の呼び鈴が鳴る


「少し、待っていてくれ。」


年老いた男性はそう言い席を立ち、戸の方へと向かう。それから数分が経ち、部屋の中に1人の荒々しい雰囲気をした男性が入ってくる


「...爺さん、なんだそのガキは。」


男性は荒々しい口調で、いかにも怖そうだった。


「あ?えっとー、、なんか儂の作った工場に久々に行ったら倒れていてな。火はもう儂が消化したし、魔法陣の気配もない。だからもう被害はこれ以上起こらないと思うんだがな...女の子が倒れておったから連れてきたんだ。」


少し納得のいかない顔をしながらも、その男性は女性に視線を一瞬向けると、笑顔を見せた後に年老いた男性に言った


「俺が、こいつの世話をしてもいいか?」


年老いた男性は不思議そうな顔をしながら問いかける


「何故だ?お前だって忙しいし、この子の面倒を見る時間なんて...」


「ある程度の家事はしてもらう。タダで家には住ませねえ。俺は家事ができないし、部屋もだいぶちらかった。綺麗にする暇もない。それに...この子の様子を見るに親とかもいなさそうだ。俺も、親がいない辛さを長い間味わった。こいつにはそんな思いはして欲しくない。せめて、家にこいつの帰りを待つ人、こいつが家で帰りを待つ人の1人ぐらいは、いてもいいと思う。爺さんの負担にもなる。俺はあんたにはすんげぇ感謝してる。だからこそ、あんたに負担だけは絶対にかけさせたくない。」


「...そうか。なら、お前の家でこの子を育ててあげなさい。」


年老いた男性がそう言うのを聞き、男性は少し寂しげな表情をする。


「...やっぱり、爺さんはこの家に居続けるのか?俺と...いや、俺らと、同居をするつもりは無いのか?爺さんも一人暮らしは大変だろうし...」


爺さんは微笑み答える


「儂が迷惑を掛けるのは、死んだ婆さんだけって決めとるんだよ。婆さん以外には迷惑を掛けない。掛けられない。儂は、ここでその信条を守り続け、生きていくと決めた。今更、それを破る気は無い。」


男性は少しの間沈黙になった後、年老いた男性に向けて優しく微笑む


「そうだ!爺さんはそうでなくっちゃな!変な質問をして悪かったな。それじゃあ、俺はそろそろ仕事の時間帯だから...そいつは仕事終わりに迎えに行くから、しっかりと飯とか食わせとけよ!あと!俺らで今話した事もしっかり説明しろよ!」


男性はそう言うと、玄関の扉から仕事へと向かっていく


「わかっとるわかっとる。...お嬢ちゃん、そういうことじゃ。分かってくれるか?」


年老いた男性はニロファを向き、そう問いかける。ニロファは、困惑した表情を浮かべながらも応じる


「えっと...う...ん...」


...人間なんて、信じるかよ。

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