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03

失ってみれば、楽しいことばかり思い出す

一体、どれほどの刻が過ぎたのでしょう




枯れ果てた木々は、新たに芽吹くこともなく

そんな有様ですから、他所から鳥が渡ってくることも、動物が移ってくることもありませんでした


風に乗っていずこより流れ来る草花の種だけが

周囲に横たわる死体を栄養に芽をだしています


しかし、それも死体が白い骨になってしまうまでのことで、

それ以降はもう、死体からは何も生えてはきませんでした


しかし、やがて枯れた木々が崩れ落ちると

そこに新たな草花の種が舞い落ち、そこで新たな芽を出したのです





わたしの首は、元のように繋がることもなく

昼も、夜も、わたしは大地に転がり、空を見上げて過ごしました



あの時、周囲から奪われた大量の命は

一度は、わたしを修復するために、私の体内に消えはしたものの

流石にこの状態ではどうにもならなかったようで、


わたしの体内に留まることができず、出てきてしまう有様でした


何度も何度も、修復を試みるようにわたしの体内へと消えては

留まることも叶わずに再び姿を現し、わたしの周囲をゆっくりとした動作で飛び回ります


過去にそうであったのと同じように、何かの拍子に空へと消えていくこともありました


以前は、極力眼を向けないようにしていたそれらも

中には愛しい子供達のものもあるのだろうと思うと、

わたしはいつまでも飽きもせずにそれらを眺めることができました



眺める魂は、どれも同じように淡く発光していましたが

中には、稀に大きく、力強く発光するものもありました


そのような特別なものがあることなど、こうなってみるまで気付かないものですね


わたしの魂はどうなのだろう、と考えました



やはり、この身に相応しく禍々しい光を放っているのでしょうか




だから、あの子たちをあんな風に死なせてしまったのでしょうか……




そんな風にも考えましたが

意外なものですね、わたしの魂は、なんら珍しいことのない、普通の魂でした


もう、限界が近いのでしょう


既に何も内包されていない筈のわたしの身体から、ふ、と淡い光が尾を引いて姿を現したのです

それは、わたしの魂でした、

他と同じように、淡く発光するそれは、何ら珍しいことのない、普通の……



わたしの魂は、たまたまこの身体で生を得ただけのことだったのですね



肉体は、終わらせてなるものか、とでもいうように

零れ掛けたわたしの魂を掴んでいるかのようでした




しかし、わたしの魂も、やがて長く尾を引いたまま、空へと消えていきました




そのような状態でも、わたしは死ぬことがありませんでした

きっと、未だ魂の一部が、この身体に囚われている所為でしょう






それから更に、どれほどの刻が過ぎたのか






やがてわたしは、起きているのか、眠っているのか、

それすらも判断できないようになっていました




夢を、見るようになったのです




それは、わたしの願望が生んだ妄想だったのか

あるいは、本当に夢の中の出来事であったのか




とても



とても、



それはとても幸福な、



儚くも恋焦がれるような、






いい、夢でした……

終わらなかった、次…かな……

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