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第51話: 新しい音の発見


朝、律希は家を出ると、心の中で何度も繰り返した言葉を胸に抱えていた。「音楽を広げるためには、新しい挑戦をしなくてはならない。」昨日の演奏を終えてから、彼の心の中で次のステップを踏む決意が固まり、今日はその第一歩を踏み出す日だと感じていた。


今日の目的はひとつ。新しい楽器を手に入れること。それは今後の音楽活動において、さらなる創造性を引き出すための重要な道具となるだろうと、律希は確信していた。どんな楽器に出会い、どんな音を奏でることができるのか。未知の可能性に胸を躍らせながら、彼は楽器店へと向かって歩き出した。


音楽の街を歩いていると、道沿いに並ぶ楽器店のいくつかを目にする。律希の足は、自然と一番奥にある店へと向かっていた。この店には他では見かけないような珍しい楽器が並べられていると、以前から聞いていたからだ。


店に到着すると、店内に漂う楽器の香りに心が落ち着く。木材、金属、革など、さまざまな素材の音が交じり合うその空間に足を踏み入れると、まるで音楽の世界に引き込まれるような感覚を覚える。


店のスタッフがすぐに律希に気づき、笑顔で迎えてくれた。「いらっしゃいませ、律希さん。今日は何をお探しですか?」


律希は少し照れくさそうに言った。「実は、今後の音楽活動に役立つ新しい楽器を探していて…」


スタッフは律希の意図をすぐに察し、少し考えてから「それなら、ぜひこちらを見てください。」と、一番奥にある棚を指さした。律希はその方向に目を向け、そこに並べられている管楽器に目を奪われた。


棚に並んでいたのは、見たこともない形の管楽器だった。それは細長い金属の筒に、広がるベルの先端が特徴的なデザインをしている。まるで古代の楽器を彷彿とさせるような形状だが、細部の装飾や磨き込まれた金属の輝きが、何とも言えず魅力的に感じられた。


「これが…新作の『エスカルド』という管楽器です。」スタッフは嬉しそうに説明を始めた。「この楽器は、金管楽器と木管楽器の両方の特徴を持ち合わせており、非常に独特な音色を生み出すことができます。演奏者の息の使い方で音の質が大きく変化するので、表現の幅が広いんですよ。」


律希はその言葉に興味を持ち、楽器を手に取った。その重さに一瞬驚いたが、手にしてみると、思っていたよりも持ちやすく感じた。管楽器でありながら、温かみのある金属の感触が手のひらに広がり、指で軽く触れると、すでにその音色を聞いているかのような錯覚に陥る。


「吹いてみてもいいですか?」律希はスタッフに尋ねた。


「もちろんです。」スタッフは微笑みながら、吹き方を軽く説明してくれた。


律希はその指示を受け、エスカルドを軽く唇に当て、息を吹き込んでみた。最初は音が出るか不安だったが、少し息を入れると、低く響く音が響き、次第にその音色が広がり始めた。金管楽器特有の力強さと木管楽器の温かみが絶妙に混じり合い、どこか遠くの場所で鳴っているような響きが律希の耳に届いた。


「すごい…」律希は思わずその音に感動した。この楽器が持っている音色には、ピアノやヴァイオリン、さらには彼が今まで触れてきたどんな楽器とも違う、深い魅力があった。それは、律希が想像していた以上に力強く、そして柔らかい音色を持っている。


「これをください。」律希は即決で言った。その音色が彼を引き寄せ、次第にこの楽器が自分の音楽にどう加わるのかを心の中でイメージし始めていた。


スタッフは嬉しそうに笑い、律希に楽器を渡した。「良い選択です。エスカルドは多くの音楽家に愛されています。きっとあなたの音楽にも素晴らしい影響を与えるでしょう。」


律希はその言葉を胸に、新たに手に入れたエスカルドを抱えながら店を後にした。楽器の質感や響きが、これからの自分の音楽にどんな影響を与えるのか、想像するだけで胸が高鳴る。


家に帰り、律希はエスカルドを丁寧に置き、少しの間その楽器を眺めながら静かに過ごした。今まで自分が使ってきた楽器とは違うその楽器が、どれほど自分の音楽に新しい風を吹き込んでくれるのか。律希はその未知なる可能性を感じながら、次の曲を思い描き始めていた。


その日、律希は新しい楽器を手にした喜びとともに、次の音楽へと進むべき道を見据えていた。エスカルドを使ってどんな音楽が生まれるのか、それを想像するだけで心が躍った。


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