第50話: 演奏後の余韻
演奏が終わると、会場は一瞬静まり返り、その後、拍手が爆発的に響き渡った。律希はピアノの前で少しの間、じっと手を置いたままでいた。周りの音が遠く感じ、手のひらのひんやりとした感触だけが残る。最初は緊張していた胸の鼓動が、だんだんと落ち着きを取り戻していった。
観客の拍手に包まれながら、律希は少し頭を下げた。心の中で、リリオとの共演がこれほどまでに素晴らしいものになるとは思っていなかった自分に、改めて驚きの気持ちが湧き上がった。リリオのヴァイオリンが自分の音楽をどう引き立ててくれるのか、それを思うだけで心が温かくなる。
リリオも同じように、律希の隣でヴァイオリンを持ちながら微笑んでいた。二人は、音楽を通じて生まれるこの絆を、言葉ではなく心で感じ取っている。彼らの音楽が交わる瞬間が、まさに生きたものとなり、会場に響き渡った。
「律希、お疲れ様。」リリオが優しく声をかけ、肩を軽く叩いた。
律希は笑顔を見せながら答える。「ありがとう、君と一緒に演奏できて本当に良かったよ。」
「こちらこそ。」リリオはヴァイオリンを少しだけ調整し、律希に向かって穏やかに言った。「君の作った曲は本当に素晴らしいよ。僕も演奏しながら心から楽しんでいた。」
その言葉に律希はほんの少し照れながらも、心から満足そうにうなずいた。「君のヴァイオリンがあってこその演奏だよ。君と一緒に作り上げられたこの音楽が、本当に嬉しい。」
律希は観客の反応をもう一度思い返した。あの拍手の音、会場に響いた歓声、それがすべて自分の音楽に対する反応だと思うと、体の中に温かいものが広がった。音楽の力を改めて実感し、自分の作ったものがこうして他の人々に届くという感覚は、想像以上の喜びであった。
「どうだった?」リリオが少し期待を込めて尋ねた。
律希は目を閉じて一息ついた後、答えた。「信じられないくらい素晴らしい演奏だったよ。最初はすごく緊張したけど、君と息を合わせるたびに、だんだんとその緊張が溶けていった。」
リリオはニッコリと笑い、「僕も最初は少し緊張していたけれど、君がすぐに音楽のペースを作ってくれたから、すごくやりやすかった。」と言った。
その後、二人は観客席に戻り、数分間立って拍手を受けながら、照れくさそうにしながらもその場の空気を楽しんでいた。周囲の演奏者たちも一緒に拍手を送ってくれて、その温かさに律希は心から感謝していた。
少ししてから、他の出演者たちと合流し、控え室へと戻った。そこではまだ他の演奏者たちが準備を終え、会話を交わしながら次のステップに進む準備をしていた。律希はその中に身を置きながらも、少しだけ肩の力を抜いてリラックスしている自分に気が付いた。
控え室では、音楽協会のスタッフが一人一人に感謝の言葉をかけていた。律希は軽く挨拶をしながら、改めて自分の音楽がどれだけ大切なものか、そしてそれを共有できる人々がどれだけ貴重であるかを感じていた。
「お疲れ様でした。」スタッフが律希に微笑みかけ、手を差し伸べてきた。
律希は手を取って、軽く頭を下げた。「ありがとうございます。本当に楽しい時間でした。」
その後、律希はリリオと一緒に会場を後にし、街を歩きながら少しの間静かな時間を過ごした。リリオが少し話しながら律希をリラックスさせ、二人は音楽を通じて共に歩んできた道のりをしみじみと感じていた。
「次は何をしようか?」リリオがふと尋ねてきた。
律希は少し考えてから答えた。「次は、君と一緒にもっと大きなステージで演奏したい。自分の音楽をもっと多くの人に届ける方法を考えていきたいんだ。」
リリオは興味深そうに律希を見つめ、「いいね、楽しみだ。」と言った。
その言葉に律希は嬉しそうにうなずき、二人は歩きながら未来の音楽活動に思いを巡らせていた。




