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第48話: 本番の日


律希は目を覚ました瞬間から、心臓が高鳴っているのを感じた。昨日の夜、寝る前にあれほどリラックスしていたはずなのに、今朝になってその緊張が一気に押し寄せてきた。手のひらが少し汗ばみ、心の中で自分に言い聞かせる。「大丈夫、練習してきた通りに演奏すればいいんだ。」でもその言葉が本当かどうか、確認するために何度もピアノを弾いてみても、指がわずかに震えていた。


今日が本番の日だということが、律希の胸を締め付ける。リリオとの共演がついに実現するということ、そして自作曲を他の演奏者とともに演奏することが、律希にとってはまさに音楽家としての転機だ。その重みが律希の肩にのしかかってきて、少しずつ緊張が膨れ上がるのを感じた。


「まずはリラックスしよう。」律希は深呼吸をしてから、ピアノの前に座った。指を鍵盤の上で軽く動かしてみる。いつもなら、すぐに曲の流れに入っていけるはずなのに、今はどうしてもその動きがぎこちなく感じる。曲を弾くためには、まず心を落ち着けなければならない。


律希は再び深呼吸をし、頭の中でリリオとのアンサンブルをイメージした。リリオのヴァイオリンが美しく響き、律希のピアノがそれを引き立てる。二人の音楽が絡み合って、まるでひとつの物語が紡がれていくような感覚。これが実現できるのだと考えると、胸が熱くなった。


その後、時間をかけて準備を整え、律希は会場に向かうために家を出た。会場が近づくにつれ、心の中でさらに期待と緊張が入り交じり、気持ちが落ち着かない。しかし、演奏会というものは、こうした緊張感が伴うものであり、律希もそれを何度も経験してきた。それでも、今日はそれが特別なものだということは、変わらなかった。


会場に到着すると、すでに多くの出演者が準備を進めており、スタッフたちが忙しそうに動き回っていた。律希は、リリオの姿を探しながら会場内を歩いた。会場の広さと、その中に漂う静かな緊張感に、少し圧倒されながらも、どこかワクワクする気持ちを抑えきれなかった。


「律希!」リリオがやっと見つけられ、律希に駆け寄ってきた。彼の顔には、いつも通りの穏やかな笑顔が浮かんでいた。リリオは軽くヴァイオリンを持ちながら、律希に声をかける。


「緊張してるか?」リリオの声は優しく、律希の緊張を少しでも和らげるかのようだった。


「少しだけ。」律希は苦笑いをしながら答えた。「でも、君と一緒に演奏できるのが本当に楽しみで、それが力になっている気がする。」


リリオはその言葉に軽くうなずき、ヴァイオリンの弓を調整しながら言った。「緊張するのは当然だよ。でも、君の音楽には自信がある。だから、あとはリラックスして、君らしい演奏をすればいいんだ。」


その言葉に律希は大きく頷いた。リリオの信頼が、いかに大きな力になるかを感じていた。二人の音楽はお互いに支え合って成り立つものだ。リリオのヴァイオリンと律希のピアノが交わることで、素晴らしい音楽が生まれることを信じていた。


しばらくすると、出演者たちが控え室に集まり、緊張した面持ちで待機し始めた。律希は自分の楽器を確認しながら、他の演奏者たちと少し会話を交わした。皆、普段通りの姿勢で演奏に臨んでいるものの、その表情からはそれぞれの思いがにじみ出ていた。音楽は、全員が心から楽しむものだと同時に、その心が一番よく伝わる瞬間でもある。


時間が経つにつれて、いよいよ演奏会の開始が迫ってきた。律希は自分の出番が近づくと、再び深呼吸をしてからピアノの前に座った。リリオもその隣でヴァイオリンを構えている。二人は目を合わせ、ほんの少しの間、言葉なしでお互いの気持ちを確認し合った。


「準備はできてる?」リリオがピアノを見つめながら静かに言った。


「うん、大丈夫。」律希は自信を持って答えた。リリオも満足そうに微笑み、ヴァイオリンを弾く準備を整える。


やがて、舞台裏から呼びかけられる。リリオと律希は、互いに軽く頷き、ステージへと歩みを進めた。観客の顔はぼんやりとしか見えないが、聴衆の期待感が空気を支配していることが感じ取れた。舞台に立つと、律希はピアノの鍵盤を見つめ、リリオが自分の隣でヴァイオリンを弾く準備をしているのを感じた。


観客の拍手が鳴り止み、いよいよ演奏が始まる瞬間が来た。律希は深呼吸をし、リリオと目を合わせると、その目に込められた信頼と期待を感じ、演奏を始めた。


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