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第42話: 日常の中で


定期演奏会が終わったあとの律希は、少しだけゆっくりとした時間を過ごしていた。成功と緊張の余韻が薄れ、心地よい安堵感が彼を包んでいた。あれだけの大きなイベントを終えて、少しだけ肩の力を抜いてもいいと思える瞬間が、ようやく訪れたのだ。


律希は一日の始まりをいつも通り静かな朝の時間で迎えた。早起きしてコーヒーを淹れる。部屋に漂うその香りが、すがすがしい気持ちをもたらしてくれる。コーヒーを飲みながら、窓の外に目を向けると、すでに街は賑やかになり始めていた。ほんの少し前に終わった演奏会の興奮がまだどこかに残っているような気がするが、律希はすぐにその思考を切り替えて、今日の予定を考えた。


「さて、今日は何をしようか。」律希は自分に問いかけるように言った。最近は音楽活動が忙しく、毎日のように練習や演奏、曲作りに追われていた。だが、今日は少し違うことをしてみたいと思っていた。音楽のことを一旦置いて、リラックスする時間を作るのも大切だ。


彼は自宅を出て、近くの公園に足を運んだ。公園には親子連れやジョギングをしている人々が散見される中、律希はベンチに座り、空を見上げた。少し湿った風が顔に当たり、なんとも心地よい。忙しい毎日を過ごしてきたが、こうして何も考えずにただ静かな時間を過ごすことの大切さを再認識した。


ベンチに座りながら、律希はふと思い出した。前世での自分がどんな生活をしていたか。音楽家としての道を歩んでいた自分は、かなりストイックに過ごしていた。だが、この世界での自分は、音楽だけでなく、日常生活を大切にしようと思えるようになった。公園の静かな時間、音楽から少し離れたこの瞬間が、律希にとって新鮮であり、心の余裕を生んでいた。


「少しは、こういう日常を楽しめるようになったのかも。」律希はそう思いながら、周りの人々の穏やかな様子を眺めた。


昼食後、律希は街を散歩することにした。歩きながら考えるのは、これからの音楽活動や新たな挑戦のことだ。だが、それだけではなく、最近気になっていたカフェや店を訪れて、少しだけ自分を甘やかすことも悪くないと思った。途中で見つけた小さな本屋に立ち寄り、何冊かの本を手に取る。音楽に関する専門書もあれば、詩集や小説なども並んでいて、律希はその中から気になるものを選んでみた。


「やっぱり、たまには本を読むのもいいな。」律希は思わず微笑んだ。本を買い、歩きながらページをめくる。読書は音楽と違って、気軽に楽しめる時間だ。空気が少し涼しくなったころ、律希はカフェに立ち寄り、コーヒーを飲みながら本を読み進めた。


日が沈み、夜の空気が少し冷たく感じる頃、律希は家に帰った。ゆっくりとした一日を過ごした後、彼は机の前に座り、楽譜に向かってペンを取った。音楽への思いが再び湧き上がり、次に作る曲に向けて少しずつ構想を練り始めた。だが今日は、音楽に関する思索が自然と湧いてきたことが、律希にとって新鮮だった。


「何か新しいアイデアが浮かんできたな。」律希はそのアイデアを楽譜に書き留めながら、穏やかな気持ちで次のステップを踏み出す準備を整えた。


その夜、律希は自分の時間を大切にしながら、音楽を作り続けた。その合間に少しだけ休息をとることで、次の日からまた音楽に没頭できるエネルギーが湧いてきた。忙しさの中にも、心のゆとりを持つことで新たな創作が生まれていくのだと、律希は感じていた。


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