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第37話: 吹奏楽への思い


律希はチューバを手に入れたことで、再びあの懐かしい感覚が心の中で蘇った。中学時代に吹奏楽部で経験したあの音楽の楽しさ、仲間たちと共に奏でた音楽の力。それは彼の音楽の原点でもあり、今もなお心の中で強く息づいていた。


「やっぱり、アンサンブルがいい。」律希は、チューバを手にしたまま呟いた。ソロ演奏も素晴らしい。しかし、あの頃仲間たちと一緒に奏でた吹奏楽の楽しさを思い出すと、どうしてもアンサンブルの方が心に響く気がしてならなかった。


「吹奏楽をやりたい。」律希はその想いが強くなる一方で、どうしてもそれを形にする機会を見つけることができなかった。


そんな時、律希は町の掲示板に「吹奏楽団メンバー募集」の告知を見つけた。そのお知らせには、地域の吹奏楽団が新たにメンバーを募集しており、さまざまな楽器の演奏者を求めているとのことだった。吹奏楽団は人数を多く集めて一緒に演奏を楽しむためのグループであり、これからメンバーとして参加することができるという内容に、律希は心を打たれた。


「これだ!」律希はその場で、すぐに吹奏楽団のオーディションに申し込むことを決めた。吹奏楽団の活動に参加すれば、あの頃の楽しさを再び味わうことができる。音楽家として新たな挑戦の場でもあり、自分が求めていた音楽の形だと確信したからだ。


オーディションの日がやってきた。律希は吹奏楽団の練習会場に足を運んだ。会場には既に多くの参加者たちが集まっており、それぞれが緊張した表情を浮かべながら準備をしていた。律希は少し胸を高鳴らせながら、会場の隅に立っていた。練習会場は広く、壁にはたくさんの楽器が並べられている。音楽の匂いが漂い、これから自分もその一員になるのだと思うと、ますます興奮してきた。


オーディションが始まると、参加者全員が順番に自分の演奏を披露することになった。律希はその中で最後の方に演奏することになったが、緊張を感じながらも自分の演奏に集中し、深呼吸をして演奏を始めた。チューバの音色が会場に響き渡り、その低音が空気を震わせた。律希は目を閉じ、音楽に身を委ねた。深い音が広がるたびに、あの頃の吹奏楽で感じた一体感が心に戻ってくるのを感じた。


演奏が終わると、律希は少し汗をかきながら楽器を置いた。その音がどのように受け取られるかはわからないが、彼は全力で演奏したことに満足していた。


その後、他の参加者たちの演奏が続いた。律希はその間、少し緊張しながらも、周りの演奏を聴いていた。さまざまな楽器が奏でられ、ひとつひとつの音が空間を満たしていく。その音楽が一つにまとまった時、どれほどの美しい調和が生まれるのだろうと想像すると、胸が高鳴った。


オーディションが終了し、参加者たちは結果を待たずに解散することになった。スタッフが告げた。「オーディションの結果は、後日手紙でお知らせいたします。お待ちいただければと思います。」


律希はその言葉に少し緊張したが、同時にワクワクする気持ちも湧いてきた。結果がどうであれ、吹奏楽団に参加することは自分にとって大きな意味があると感じていた。音楽の楽しさを再び感じられることが、何よりも嬉しいことだった。


その日、律希は他の参加者たちと少し会話を交わした。その中で、チューバを演奏していた一人の男性と親しく話をすることができた。彼は律希に微笑みかけながら言った。


「君もチューバか?久しぶりに吹奏楽をやるの?」その男性は少し年齢が上のようで、穏やかな笑顔を見せた。


「ええ、昔吹奏楽部にいたんです。中学の頃からずっとチューバを担当していて、またあの頃の感覚を味わいたくて参加しました。」律希は少し照れくさそうに答えた。


「なるほどね、吹奏楽のあの一体感がやっぱりいいよね。」男性は頷きながら言った。「僕も久しぶりに参加したけど、みんなで奏でる音楽って本当に素晴らしいんだ。」


律希はその言葉に共感した。「そうですね、一人で演奏するのも楽しいけど、やっぱりみんなで音楽を作り上げるのが一番楽しいと思います。」


「僕の名前はカルロ。君と一緒に演奏できたら楽しいだろうね。」カルロはにっこりと笑い、手を差し出した。


「律希です。よろしくお願いします、カルロさん。」律希はその手をしっかりと握り返した。


その後、律希は帰宅し、結果を待つ日々が続いた。数日後、律希の家に音楽団から手紙が届いた。封を開けると、そこには律希が吹奏楽団に参加することが決定した旨が書かれていた。彼はその文字を目にした瞬間、嬉しさが込み上げてきた。再び仲間たちと共に音楽を作り上げていける――そのことが、律希にとって何よりも嬉しいことだった。


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