第30話: 新たな挑戦の始まり
律希はハープの前に座り、指先で弦を弾きながら、静かな時間を過ごしていた。最近作った曲が、心の中で一つの形を成していくのを感じていた。彼の手から紡がれるメロディは、自由で情熱的でありながら、同時に深い静けさも感じさせるものだった。それは、感情そのものが音楽になったような、まさに自分を表現するための作品だった。
「これが、僕の音楽だ。」律希は、心の中でそう呟きながら、何度もその曲を弾き返していた。メロディの一つひとつが、彼の心を反映したものだった。この音楽は、律希が求めていた答えであり、彼が目指してきた音楽の形そのものだった。
その夜、律希が作業していると、突然扉がノックされた。彼は顔を上げると、そこにはリリオが立っていた。リリオはにこやかに微笑み、律希を見た。「律希、また何かいいものが出来たんだろうな。」
「うん、ついさっき、曲が完成したんだ。」律希は少し照れくさそうに言いながら、手元の楽譜を見せた。「自分でも驚くくらい、自然に曲が出来上がったんだ。」
リリオはその楽譜を受け取ると、じっとそれを見つめた。律希が作った曲を目にしたリリオは、しばらく無言で楽譜を読み進め、最後に顔を上げた。「これは素晴らしいな。お前、すごく進歩したんだな。」
律希はその言葉に少し驚きながらも、嬉しさが込み上げてきた。「本当に、うまくいったんだ。」
「うん。」リリオは笑いながら答えた。「この曲、すごく感情的だし、自由で新しい感じがする。お前の音楽に対するアプローチが、まさに変わったんだな。」
律希はそれを聞いて、改めて自分の音楽に対する思いを強く感じた。「でも、まだどうしたらいいのか分からないんだ。曲を完成させたけれど、これをどう活かしていけばいいのか。」
リリオは律希を見つめ、静かに言った。「そのまま、演奏し続けるのもいい。でも、少し考えてみてほしいんだ。お前、この曲を他の人にも演奏してもらいたいと思わないか?」
律希はリリオの言葉に少し驚いたが、すぐに思い出した。転生前、師匠の楽譜出版を手伝ったことがあったのだ。その時、数多くの作曲家や音楽家が楽譜を手に取り、演奏していた光景が浮かぶ。それが彼にとっては、非常に自然なことだった。
「そういえば、そんな手があったな。」律希は少し考え込み、すぐに決意を固めた。「楽譜を出版して、他の演奏家に演奏してもらうのもいいかもしれない。」
リリオは嬉しそうに頷いた。「そうだろう?お前の音楽には、もっと多くの人に演奏してもらう価値がある。自分の音楽を広めることで、他の音楽家たちに触れてもらい、彼らが演奏することで、さらに深みを増すんだ。」
律希はその言葉にすぐに理解を示した。音楽を広める方法として、楽譜の出版は転生前の自分にとっても非常に一般的なことだった。自分の音楽が他の演奏家たちの手に渡り、彼らの演奏によってさらに形を変えていく様子を想像すると、胸が高鳴った。
「それなら、もう決めた。」律希はすぐに答えた。「楽譜を出版して、他の音楽家たちにも演奏してもらう。それが次のステップだ。」
リリオは嬉しそうに微笑んだ。「その決断、良かったな。お前にはそれが必要だ。次のステップに進むために、自分の音楽を広めて、もっと多くの人に演奏してもらえ。」
律希はその決意を新たにし、楽譜を手に取って眺めた。自分の音楽が広がり、多くの演奏家たちに触れられる日が来ることを確信した。そして、次の一歩を踏み出す準備を着々と整えていった。
「これが、僕の音楽だ。」律希は心の中で再確認しながら、再びハープの弦に手を触れた。新たな挑戦が、今まさに始まろうとしていた。




