第3話: 音楽協会の扉
律希は街の中心に向かって歩きながら、心の中で何度も自分に言い聞かせた。「音楽協会に行けば、きっと何かが変わる。」店主が言った通り、音楽に情熱を注ぐ者が集う場所だという。彼の思いが確かなものであることを、信じて進むしかない。
音楽協会の建物は、街の中心にある大きな広場を少し歩いた先に位置していた。見上げると、豪華な装飾が施された建物が目を引く。巨大な扉の前に立つと、律希は少し躊躇いながらもその扉を開けた。中に足を踏み入れると、静かな雰囲気の中に、心地よい音楽が響いていた。
広いロビーには、様々な楽器が展示されている棚が並んでおり、壁には音楽家たちの肖像画が飾られている。その中で、律希の目に留まったのは、扉の先に座っている一人の中年の男性だった。彼は、白髪が目立ち、眼鏡をかけた姿で、何かを記録しているようにペンを動かしている。その姿を見て、律希は勇気を出して声をかけた。
「失礼いたします、少しお話をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
男性は顔を上げ、律希に気づくと、にっこりと笑った。
「おや、君は新しい顔ですね。どうされましたか? 何かお困りのことがあれば、どうぞ気軽にお話しください。」
律希は少し照れくさい気持ちを感じながらも、自分の思いを伝えた。
「実は、音楽をしていたのですが、まだ楽器を手に入れておらず…店主に言われて、音楽協会に来てみました。」
男性はしばらく律希を見つめた後、頷きながら言った。
「なるほど。君が音楽をしていたのですね。それでは、まずはどうしてこちらに来られたのか教えていただけますか?」
律希は少し戸惑いながらも、素直に話し始めた。
「自分の音楽を試してみたくて。まずは楽器を手に入れて、どこまでできるのか試してみたいんです。」
男性は黙って律希の言葉を聞き、うなずきながら言った。
「わかりました。それなら、君が音楽を続けていくためにどう支援できるか、考えてみましょう。音楽協会としては、楽器を直接提供することは難しいですが、演奏の機会を提供することはできます。例えば、私たちが主催するイベントやコンサートで演奏をして、得た報酬で楽器を手に入れる方法があります。」
律希はその言葉に少し驚き、目を輝かせた。
「演奏でお金を稼いで、楽器を手に入れるんですか?」
男性はうなずきながら続けた。
「はい。その通りです。演奏活動を通じて得たお金を使い、君が必要な楽器を購入することができます。また、音楽協会内でも、演奏する場が提供されるので、経験を積むこともできるでしょう。」
律希はその言葉に希望を感じた。自分が音楽活動を通じて楽器を手に入れる道が開けたことが、どれほど大きな意味を持つか、改めて実感した。
「ありがとうございます。演奏してお金を稼ぐことで、楽器を手に入れられるんですね。」
男性はにっこりと微笑みながら答えた。
「その通りです。ただし、最初は簡単なイベントでの演奏になるかもしれません。それに、君がどのくらいの実力を持っているのかを評価するためのオーディションもあります。そこで君の演奏を聴いて、出演するイベントを決定します。」
律希はその話を聞いて、ますますやる気が湧いてきた。
「わかりました!オーディションに向けて準備します!」
男性はうなずき、励ましの言葉をかけた。
「君のやる気が伝わってきました。オーディションに向けて、しっかり準備していきましょう。そして、君が演奏を通じてもっと多くの人に音楽を届けられるよう、私たちも応援します。」
律希はその言葉に心から感謝し、目標に向けて新たな一歩を踏み出す覚悟を決めた。