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第26話: 演奏後の感情


全ての演奏が終わった後、会場は再び静寂に包まれた。すべての演奏者が舞台を降り、観客たちの拍手が少しずつ収まっていく。律希はその静けさの中で、自分の周囲にいる他の演奏者たちの気配を感じながら、心の中で無数の思いが交錯していた。


他の演奏者たちも、今はきっと同じように結果発表を待ちながら、自分の演奏を振り返っていることだろう。律希は、他の演奏者たちの演奏がそれぞれにどれほど素晴らしいものだったかを思い返していた。彼は、アンドレアの演奏の圧倒的な技術と感情表現に心を打たれ、あの力強さに何度も圧倒された。レティシアの冷徹で狂気的な演奏も、聴く者に深い印象を与えていた。彼女が表現した音楽には、計算された完璧さとともに、破壊的なエネルギーが隠されていた。


そして、イザベルの演奏。その繊細で心に響く音楽は、律希に強い感情を呼び起こさせた。彼女の演奏は、どこか温かさを持ちながらも、その美しさに込められた悲しみや喜びが感じられた。律希は、自分の演奏を思い返しながら、他の演奏者たちの音楽を内心で感じ取っていた。それぞれがどんなに素晴らしい音楽を届けていたか、そしてその演奏を聴きながら、律希は自分が果たして他の演奏者たちと肩を並べることができたのだろうかという思いに駆られていた。


エリシアの演奏は、どこか力強くエネルギッシュだったが、そのパフォーマンスには少しだけ安定感に欠ける部分もあった。しかし、観客を魅了するエネルギーは十分に感じられた。律希はその演奏を聴きながら、彼女のように観客を引き込む力を自分も持つべきだと感じた。


そして、ヴァイウスとカナリス。二人の演奏は、それぞれに独自の魅力があり、どちらも観客を魅了していた。しかし、律希はその演奏が少しばかり不安定に感じた部分もあった。特にカナリスの演奏は、時折音楽が予測できない方向に進みすぎて、観客を驚かせることもあった。しかし、その冒険心が音楽に新たな風を吹き込んでいた。


「全員、それぞれに素晴らしい演奏をしていた。」律希は自分の心の中でそう認めた。だが、同時にその認識が彼を不安にさせる。彼は自分がどれほど他の演奏者たちに届いたのか、そして果たして自分の音楽が他の素晴らしい演奏者たちと同じように評価されるのかを心配していた。


律希は舞台裏で静かに深呼吸をし、心の中で次の瞬間を迎える準備をしていた。演奏が終わってからのこの静かな時間が、余計に結果発表への不安を大きくしていく。すべての演奏が終わった今、結果発表の瞬間が待ち遠しくもあり、恐ろしさを感じる瞬間でもあった。


「でも、今は待つしかない。」律希は目を閉じ、結果発表が始まるその瞬間まで、自分の音楽を信じて待つことしかできないと自分に言い聞かせた。


会場では、審査員たちが結果をまとめるために集まり、会話を交わしているのがわかる。律希はその様子を気にしながらも、思考を整理することに集中した。音楽を作ること、それを表現すること、そしてその評価を受け入れること。それがこの世界で自分が選んだ道であり、どんな結果でも前に進むための糧になることを信じていた。


周りの演奏者たちも、同じようにその瞬間を待っているのだろう。アンドレアは冷静に結果を受け入れようとしているように見えたし、レティシアはその静けさの中に緊張を感じているようだった。イザベルは、恐らく心の中で深く考え込みながら、その結果を待っているだろう。他の演奏者たちも、それぞれに結果発表を前にどんな思いを抱えているのか、律希は心の中で思いを馳せた。


「どんな結果でも、今はただ、信じるべきは自分の音楽だけだ。」律希は強く心に誓い、結果発表を待ち続けた。


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