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第16話: 作曲の完成と練習


律希は、アルペイロのコンクールに向けた自作曲をついに完成させた。曲の構成、和声進行、リズムの取り入れ方、全てにおいて彼の音楽的な成長が表れている。だが、その完成度の高さが、実際に演奏する際には予想以上の難易度を生んでいた。


律希は楽譜を見つめ、手元にアルペイロを置いた。曲の構成はソナタ形式で、メロディーとリズムの絡み合い、そして複雑な和声の進行が特徴的だった。彼が作り上げたメロディは美しく、和声の選び方も巧妙だ。しかし、演奏するとなると、曲はすぐに予想以上に難しく感じられた。


「これ、本当に弾けるのか…?」律希はつぶやきながら、最初のフレーズを弾いてみた。だが、その音は思った通りには響かない。リズムが微妙にずれてしまい、和声が崩れ、メロディが滑らかに流れない。最初の数小節で、すでに苦戦している自分に気づいた。


彼は何度も何度もそのフレーズを弾き直したが、手が慣れず、どんどん力が入ってしまう。アルペイロの弦を弾くタイミング、音を出す強さ、その全てを意識しなければならないのに、律希はどうしても自分のイメージに合った音を出せなかった。


「どうしてこんなに難しいんだ…」律希は深いため息をつき、手を止めた。曲のフレーズが進むにつれて、和声の進行が少しずつ変化し、リズムの複雑さも増していく。彼はリズムを捉えようとしたが、メロディの途中で鍵盤を押し間違えてしまう。何度やり直しても、手が思うように動かず、指先が痛くなる。


「もう一度…」律希は心を奮い立たせ、再び鍵盤に手を乗せた。だが、曲の展開が進むにつれて、律希はどんどん焦りを感じるようになった。ポリリズムを意識してリズムを重ねる部分では、手と足の協調が崩れてしまい、演奏が一気にバラバラになってしまう。律希はその部分を繰り返し練習したが、思った通りにリズムが合わない。


「ここを越えないと…」律希は必死に練習を続けた。メロディの中に含まれるテンションコードや、ディミニッシュコードの使い方が曲に深みを加えると期待していたが、和声がうまく絡まず、テンポが合わない。


時間が経つにつれて、律希はどんどん疲れていった。指先が鈍く、体も固まってくる。手を止めるたびに、焦燥感が胸に広がっていった。「どうしてこんなに苦しいんだ…」律希は何度もそのフレーズを弾き直しながら、次第に気力を失いかけた。


曲の途中で、和声が複雑に絡み合い、リズムの変化が絶え間なく続く部分では、律希は手の動きが追いつかず、どうしても流れを止めてしまう。毎回リズムが合わず、手が止まるたびに、彼は自分の未熟さを痛感した。


「ここまで難しくするんじゃなかった…」律希はつぶやいた。作曲した時には、こんなにも演奏が難しいとは思っていなかった。曲の美しさが先行しすぎて、その演奏がいかに高度であるかに気づかなかったのだ。彼は自分の音楽に対して情熱を注いでいたが、その情熱が逆に自分を追い詰めていることに気づいた。


律希はしばらくその場に座り込み、楽器を前にして考え込んだ。自分の音楽に対する自信が揺らぎ、どうしても思い通りに弾けない曲に対して無力感を感じていた。だが、すぐに彼はその感情を振り払った。


「ここで諦めたら、何も始まらない。」律希は深く息を吸い、再び楽器に向かって手を伸ばした。


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