第12話: 新たな音色、響く挑戦
律希は音楽活動を続ける中で、音楽協会から再び支援の話が舞い込んだ。今回は新しい楽器、ハープを手に入れるチャンスが与えられた。律希は長年その音色に魅了されており、いつか演奏してみたいと思っていた楽器の一つだった。ハープの音は、まるで天使のような柔らかさを持ちながらも、強く響く音色で、その豊かな表現力を使いこなせれば、音楽に新たな深みが加わると確信していた。
「これがハープか…」律希は楽器を慎重に取り出し、布をかけて保管していたその美しい楽器を確認した。ハープは非常に優美なデザインで、長い弦と大きな木製のフレームが印象的だ。彼はその美しさにしばし見とれていたが、同時にこの楽器を使いこなすためには多くの努力が必要だと認識していた。
最初にハープの前に座った律希は、弦を指で弾く感覚に思わず戸惑った。弦は鍵盤楽器とは異なり、指で弾く力加減や弦の触れ方が非常に重要だ。律希は、指先で弦を弾く力を調整しながら音を出そうとしたが、最初のうちは音が安定せず、ひどく鋭い音や、逆にほとんど音が出ないことが多かった。
「どうしても、音が安定しない…」律希は弦を弾くたびに微妙な違いを感じ取り、その力加減を調整しようと試みたが、うまくいかない。その感覚に慣れるまで、時間がかかりそうだった。
さらに、ハープにはペダルがついており、これを踏むことで音のピッチを調整することができる。しかし、このペダルの使い方も非常に難しかった。ハープのペダルは、鍵盤楽器のペダルとは異なり、しっかりと踏み込むことで音のピッチを調整し、弦の音色を変化させる。律希はそのタイミングをつかむのに苦労し、ペダルを踏み込んだり、踏み足りないと音が変わらなかったりして、うまく音を調整することができなかった。
「ペダルを踏むタイミングと力加減が…まだよくわからない。」律希はペダルをしっかり踏み込んでも、音が思った通りに変化せず、次第に焦りを感じ始めた。ペダルを踏みすぎると音が不自然に引き伸ばされたり、踏み足りないと音がすぐに消えてしまったりすることがあり、律希はその調整に苦しんでいた。
数日間、律希はリズムや力加減を調整しながら練習を続けた。最初は全く音が安定せず、演奏すること自体が苦痛に感じることもあった。しかし、少しずつ指を弦に触れる感覚が掴めるようになり、音が安定して響き始めた。ハープの弦の振動を感じることで、律希は少しずつその感覚に慣れていった。
「柔らかく弾くと、この音が出るんだな。」律希は音が徐々に安定するのを感じ、弦を弾く感覚を少しずつ覚えていった。ペダルも、踏み込むタイミングを意識しながら調整することができるようになった。ペダルで音のピッチを変えることに慣れ、曲の中でどのタイミングでペダルを踏むべきかを理解し始めた。
練習を続けていくうちに、律希はようやくハープの響きに心を寄せることができるようになり、演奏中に音の変化を感じ取ることができるようになった。「この楽器の音色、やっぱり素晴らしい。」律希は、練習を重ねるごとにその音色に魅了され、自分の音楽に新たな深みを加える手ごたえを感じ始めていた。
数週間後、律希はハープを持ち寄って小さなリハーサルを行うことにした。彼は新たに学んだ演奏技術を使って、まだ完璧ではないが、少しずつ自信を持って曲を演奏しようと考えた。音楽学校での学生たちの前で、ハープを演奏する機会を作り、自分の進歩を見せることが重要だと感じたからだ。
リハーサルの最中、律希は学生たちに見守られながら、ハープを演奏した。最初は少しぎこちなさが残ったものの、次第に音が安定し、リズムも取りやすくなってきた。律希はその音色に自信を持ちながら、演奏を続け、音楽に完全に没入していった。
演奏が終わると、学生たちから拍手が送られた。「先生、素晴らしい音色でした!」と、一人の生徒が言った。律希はその拍手に少し照れくさそうに笑い、深くお辞儀をした。
「これからが本番だ。」律希は心の中で新たな決意を固めた。まだ完璧な演奏ではないが、彼はハープという楽器をしっかりと自分のものにするため、さらに練習を重ね、演奏の幅を広げていくことを決意していた。
演奏会に向けて、彼はまだ数回の練習を重ねなければならない。しかし、少しずつ自分の音楽がこの新しい楽器とともに広がっていく感覚を確信し、律希はその先に待つ次の挑戦を楽しみにしていた。




