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032.共闘作戦をあなたへ①

手のひらの上で踊ろう!【クライ編】と合わせて二軸同時進行中です。

https://ncode.syosetu.com/n2899ja/


※こちらは【アキラ編】です。

「それじゃあ、やってくれるんだね!」


 俺は牛飼いのカーボ少年の手を握る。


「はい。うまくいくかはわかりませんけど、できるだけ頑張ります」


「ありがとう!」


 俺の手を払い除けて、ルシュがカーボ少年の手を握る。

 カーボは、顔を耳まで真っ赤にして、あたふたとしている。


 わかる。わかるぞ。

 でも、このお姉さんに惚れると、色々と面倒臭いぞ、カーボ少年。


「それで、さっきの話なんですけど……」


「心配いらないよ。前金で金貨十枚。成功したら追加で十枚。もちろん、上手くいかなくても前金は返す必要はない」


「ありがとうございます!」


 まあ、破格の条件を提示したという自負はある。

 しかし、それだけ出してでも、カーボとその相棒たちの協力を是非とも取り付けたかった。


「いや、お礼を言うのはこっちの方だよ。おかげで少し光明が見えてきたよ」


 深々とお辞儀をするカーボに、俺も頭を下げた。


 作戦はこうだ。

 まずは、カーボ少年の相棒たち、牧畜犬のイッチ、ニッチ、サッチの三頭が、キラーブルの群れを、草原にある岩山の狭い隙間に誘導する。そこを俺が岩山の上からナイフの投擲で一網打尽にする。

 名付けて『牧畜犬で追い込んでナイフで一網打尽作戦』だ。

 まあ、そのまんまだな……


「じゃあ、早速で悪いんだけど、君の親御さんにも話をしておきたいんだが、今から伺っても大丈夫かな?」


「はい。アキラさんから母に話をしてもらえると僕も助かります。あ、よかったらうちに泊まっていきませんか? この村には宿なんてありませんし」


「いいのかい?」


「もちろんです」


 カーボは元気よく答えながら、ちらちらとルシュのことを盗み見ている。

 なるほど。ルシュが目当てってわけね。思春期だなあ。



 三十頭ぐらいの牛の群れの最後尾を、牛の歩みに合わせてゆっくりとついていく。

 その群れを統率しているのは三頭の牧畜犬たちだ。遅れている牛がいれば追い立て、はぐれそうになっている牛がいれば群れに戻し、円を描くように周囲を走り回りながら、群れが一つの塊となるように維持している。


「よく訓練されているんだね」


「ありがとうございます。みんな、とても優秀なんですよ」


 俺が牧畜犬たちを褒めると、カーボは自分のことのように喜ぶ。

 うん、実に良い牛飼いだ。


「それで、さっきの話なんだけど、野生のキラーブルでも狙ったところに移動させられるっていうのは本当かい?」


「はい、たぶん大丈夫だと思います。基本的に牛追いって、追われる側の牛も訓練というか、慣れが必要なんですけど、イッチたちなら、複雑な動きをさせることは無理でも、ある程度狙った場所に誘導することぐらいできると思います。訓練を兼ねた遊びでそういうことをやったりもしますから」


 それは頼もしい限りだ。


「あとは、大型種を相手にしても同じことができるかってことだね」


 俺の言葉に、カーボは少し緊張したような顔でコクリと頷く。


「緊張しなくても大丈夫さ。ダメでもともとだし、君や君の相棒たちのことは俺がちゃんと守るからさ」


 そうして家に到着すると、カーボはまず、牛を牛舎に戻し、水を与えた。次に、イッチ、ニッチ、サッチの順に頭を撫でてから、彼らの分の水と食事を準備する。それからようやく俺たちの元へと戻って来た。


「すみません。お客さんなのにお待たせしてしまって」


 一に牛、二に犬、そして、たとえそれが客人であったとしても、最後に人。

 これが牛飼いにとっての大切な手順なのだそうだ。

 カーボは何度も頭を下げているが、その仕事に対して誠実に取り組む姿勢には、こちらの方が頭が下がる思いだ。年下ながら見習わなければと思わされるよ。


「母さん! お客さん!」


 カーボが家の奥に向かって叫ぶと、パタパタと足音を立てながら、一人の女性が、いや、エンジェルが姿を現した。


 若ッ! 綺麗ッ!


「お、おい、カーボ君。こちらが君の母君なのかい?」


 お姉さんじゃなくて?


「そうですけど?」


 いや、これで十二歳の子持ちとか、とても信じられない。

 こんなに綺麗なお母様がいながら、ルシュ見惚れるなんて、君の目はどうかしているんじゃないか?

 おっと、これ以上は危険だ。チラリとルシュを見ると、ジト目でこちらを睨んできている。


「まあまあ、お客様なんてめずらしいわ。どうなされたのですか?」


「あなたに会いに——痛ッ!」


 ルシュが踵で思い切り俺の爪先を踏み抜いて、俺は思わず声を上げた。


「何すんだよ! ちょっとした冗談だろ?」


「そういう冗談、カッコ悪い」


「だからって、思い切り足を踏むことないだろうが。骨が砕けてたらどうする——」


「ぷっ、ふふふ」

「あはは」


 俺たちのやり取りを見ていた二人が噴き出した。


「仲がいいんですね。羨ましいわ。さ、立ち話もなんですから、どうぞお上がりください」


   ⚫︎


「そういうわけで、カーボ君に協力をお願いしたくお伺いしました。保護者の方の同意を得る前にカーボ君に依頼をするという不躾なことをしてしまい、申し訳ありません」


 客間に通された後、俺は事情を説明し、未成年に勝手に仕事を持ちかけた非礼を詫びた。

 ちょっと先走って、思わずカーボに話をしてしまったけど、やっぱりそれはまずいよね。現代日本であれば、相当叩かれるやつだ。

 隣ではルシュも一緒に頭を下げてくれている。


「お二人とも頭をお上げになってください」


 カーボの母、フーラさんは微笑みながらそう言って、温めたミルクを勧めてくれる。


「カーボは大人ではないだけで、子どもでもありませんわ。一人の男としてこの家を支えてくれています。そして、一人の牛飼いとして、その仕事をお受けしたいと思ったから、そうしたのでしょう」


 フーラさんに視線を向けられたカーボは、力強く頷いた。


「いつもと違うことや、ちょっとした冒険をしたくなる気持ちはわかるわ。男の子だし、お父さんの子だものね。でもね、カーボ、ちゃんと覚えていて」


 そこでフーラさんは、カーボの方に向き直り、しっかりと顔を見合わせる。


「仕事は自分の力を見極めてから決めること。やると決めた仕事は一生懸命にやること。それから、最後は無事に帰って来ること。いいわね?」


「わかったよ、母さん」


「今回もよ?」


「うん。約束だ」


 もう一度、力強く頷くカーボ。

 それを確認したフーラさんは、もう一度俺たちの方に向き直って、頭を下げた。


「息子のことをお願いします」


 その姿に、若いだとか、綺麗だとかはしゃいでいた自分がちょっと恥ずかしくなってしまった。

 歳とか見た目とか、そんなことに関係なく、いつでもどこでも母親って、やっぱり母親なんだな。しみじみそう思う。


「必ず無事にお返しします」


 子を憂う母を前に、俺はそう強く誓うのだった。


アキラ編は月・木連載となります。


【以下テンプレ】

是非ともブックマークをお願いします。

ベージ下部から評価もしていただけると作者が喜びます。


同タイトル【クライ編】と合わせて二軸同時進行中です。

https://ncode.syosetu.com/n2899ja/

よろしければそちらもお楽しみください。

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