我、天に使いける誇り高き煙の無い火の子なり
「兄さん。またゼウス様に怒られたのかい?」
天使の象徴とも言われる翼を、背中に6つこしらえた赤髪の少年が
足元に横たわっている天使に声をかける。
天使は、少年と負けず劣らず美麗な顔立ちで、同じ赤髪だが、翼が一枚多い。
「ああ、ミカエルか。そうだ、怒られてしまったよ。勝手に伝書の書き換えをしてね。」
7枚の翼の天使は苦笑する。
ミカエルと言われたほうの天使はため息をつき、
「オベリスク神様も言っていたよ。『ルシファーは仕事は出来るが、もう少し常識を習ったほうがいい』
ってね」
「仕事は出来る・・・か。光栄だな。はっはっは!」
7枚の翼を持った天使の名を、ルシファーといい、天界(天国)では有名な異端児である。
弟のミカエル同様、仕事に関することで彼に文句を言う者は皆無だが、性格、クセは一風変わっていて
神々の笑い話の話題にされることすらあった。
しかし当の本人は、まったく気にすることなく仕事に励み、時には自嘲することもあった。
そんなルシファーは、大概¨変わり者¨と言われるが、近寄りがたさは無く、いわゆる人気者だった。
「ミカエル、お前は少し真面目すぎるんだよ。ゼウス様の冗談も、真に受けたもんな。」
「あ、あれは・・・まだ小さかったから・・・よく意味が・・」
一方ミカエルは、真面目、誠実、兄思いで、少々近寄りがたい。
優しいのだが、若干神経質で、ルシファーとは別の意味で、女天使から人気があった。
「まあいいや。」と、ルシファーは寝返りをうち、神々の住む地域¨サンクチュアリ¨を見た。
その目はどこか遠い所を見るような目つきで、ミカエルはそれに気づく。
「どうしたの兄さん?妙な顔して?」
「いや・・・あのさ・・・」
ルシファーは、横倒しにしていた自分の体を上げ、首の骨を鳴らした。
「神様方は、どうして俺ら天使を御創造なさったんだろうかなってさ。」
自分のクセのついた髪の毛をなで、小さな声で、しかしはっきりとした口調でそう言った。
ミカエルは、自分が質問されているのかどうなのかわからなかったが、少し考えて
「神様たちじゃ目の行き届かない場所を見張るためかな?」
「でも、そうだとしたらしたら、サマエルみたいな天使も創造するか?」
サマエルとは、全身が影のようなもので出来ていて、目に当たる部分だけが怪しく光る
見た感じでは悪魔と相違ない天使である。
死を司る天使で、決して喋ることは無く、肯否定の仕草も、うやむやな無口で有名な天使。
「うーん・・・サマエルさんは特別かな?ほら、神様たちが昔、地獄や魔界と別に、[ゲヘナ]ってゆう世界を作って、人間をそこで御創りになったでしょ?もう、使われていないけど、第2の地獄にするって話も出ていたみたいだよ。サマエルさんは、そこの看守役とかに任命されるはずだったんじゃない?」
「ゲヘナは、アーリマンにグッチャグチャにされたもんな。」