表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/27

第22話「大人気ギャルの要求」

「おっかいもの♪ おっかいもの♪」


 スーパーを目指して歩く中、腕の中にいる美海ちゃんはとてもご機嫌だった。

 よほど買いものが好きらしい。


 しかし――。


「美海、今日はプリンもドーナツも食べたんだから、おやつは買わないよ?」

「がーんっ……!」


 風見さんの一言により、その表情は絶望に変わってしまった。

 わざわざ効果音を口にするくらい、ショックだったらしい。


 それにしても……なるほど、おやつを買ってもらえると思っていたのか。


「なんて可哀想(かわいそう)なことを……」

「だって、お店に行ってから買わないって言ったら、絶対泣いて暴れるもん」

「まぁ、それはそれで確かに困るけど……」


 俺は腕の中にいる美海ちゃんに視線を戻す。

 美海ちゃんは泣きそうな表情で目をウルウルとさせながら、ジィッと風見さんを見つめていた。


 だけど、風見さんは美海ちゃんを見ようとしない。

 この目を見てしまったら、負けるとわかっているのだろう。


 そうなってくると、美海ちゃんが標的にするのは――

「せいちゃん、おやつかってもらえない……」

 ――俺だった。


 まぁ、自然な流れだろう。

 俺を味方につけたほうが、話が早いからな。


「ごめんね、美海ちゃん」


 本当なら美海ちゃんの味方になってあげたいけれど、お金を出すのは風見さんだ。

 それに、美海ちゃんの健康を考えても、あまりおやつを食べさせるのはよくない。

 だから、渋々断ったのだけど――。


「うぅ……」


 (すが)るような目で、ジッと見つめられてしまった。


 この子、これが自分の武器だと自覚しているんじゃないだろうか?


 とりあえず、風見さんと同じように目を逸らすことにした。

 すると――。


 クイクイ――と、めっちゃ美海ちゃんが胸元の服を引っ張ってきた。

 こっちを見ろ、ということだろう。


「風見さん……」

「駄目、買わないから」


 くっ、これでは俺が板挟みじゃないか。


「美海ちゃん、今日はもう我慢しようね? 明日になれば、また風見さんがおやつを作ってくれるから」

「おやつ……」

「うっ……」


 この子、どんだけ食い意地を張っているんだ……。

 まぁそういうところもかわいいのだけど、さすがにこの状況では困る。


 そのまま、頑張って美海ちゃんの誘惑(ゆうわく)から逃れていると――。


「むぅ……」


 美海ちゃんは頬をパンパンに膨らませて、俺の胸に顔を押し付けてきた。


「拗ねちゃった……」

「そのまま寝ると思うから、寝かしてていいよ」


 風見さんの言う通り、やがて美海ちゃんの頬はしぼみ、かわいらしい寝息が聞こえてきた。

 ふて寝をしたようだ。


「子育てって大変なんだね……」

「そうだね。でも、今日は誠司がいてくれるから、私は助かったよ」


 そう言って、ニコッと笑みを向けてくる風見さん。


 ずるい。

 こんなこと言われたら、誘われた時に断れなくなるじゃないか。


「誠司って子供好きなの?」

「また、ロリコン扱いする気……?」

「違うって。そうじゃなくて、普通に子供が好きか聞いてるの」


 俺が白い目を向けると、風見さんは困ったように笑いながら返してきた。


「まぁ好きだね。もちろん、恋愛的な意味じゃなくて」

「わかったってば。でも、そっか……ふふ」


 何やら楽しそうに笑っている風見さん。

 悪巧みをしているな?


「ねぇ、誠司――」

「嫌だ」

「まだ何も言ってないけど!?」


 先手を打って断ると、風見さんが驚いたようにツッコミを入れてきた。


「だって、絶対悪巧みだし」

「酷い!! 私はただ、これからも(うち)に来てって誘おうとしただけなのに……!」


 まるで美海ちゃんかのように、頬を膨らませて抗議をしてくる風見さん。

 子供か。


「美海ちゃんはかわいいけど、風見さんがからかってくるからなぁ?」

「だからからかってないって、言ってるでしょ……! いい加減怒るよ!?」


 それは怒っているって言わないのだろうか?


「変なことをしてこないなら、これからも行かせてもらうよ」


 俺だって、美海ちゃんの遊び相手になるのは楽しい。

 何より、美海ちゃんはとてもかわいくて、話し相手をしているだけで(いや)される。

 だから、遊びに行くのは問題がなかった。


 ――そう、風見さんがからかってさえこなければ。


「私のこと、抱きしめたくせに」

「――っ!?」

「頭撫でたりとかしたくせに」


 やりすぎてしまったのか、風見さんがジト目を向けてきながら、俺がやったことを掘り返してきた。


「そ、それは、美海ちゃんを誤魔化すためで……!」

「でも、やったことは事実だし、明日学校でみんなに言っちゃおうかな~?」


 それはやめてくれ。

 男子たちから半端ない恨みを買うし、女子たちから弄られる気しかしない。


「くっ……要求はなんなの……?」

「ふふ、要求?」


 脅しをかけてきているので、絶対何か求められると思って聞いたのだけど――風見さんは、ニヤッと悪そうな笑みを浮かべた。

 いったい何を要求する気なのか……。


「要求はね――1日3回、私のお願いを聞いてもらいます……!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『新作です……!』
↓のタイトル名をクリックしてください

数々の告白を振ってきた学校のマドンナに外堀を埋められました

『数々の告白を振ってきた学校のマドンナに外堀を埋められました』5月23日1巻発売!!
  ★画像をクリックすると、集英社様のこの作品のページに飛びます★ 
数々1巻表紙
  ★画像をクリックすると、集英社様のこの作品のページに飛びます★  


『迷子になっていた幼女を助けたら、お隣に住む美少女留学生が家に遊びに来るようになった件について』8巻発売決定です!
  ★画像をクリックすると、集英社様のこの作品のページに飛びます★ 
お隣遊び6巻表紙絵
  ★画像をクリックすると、集英社様のこの作品のページに飛びます★  


『迷子になっていた幼女を助けたら、お隣に住む美少女留学生が家に遊びに来るようになった件について』コミック2巻発売中!!
  ★画像をクリックすると、集英社様のこの作品のページに飛びます★ 
お隣遊びコミック2巻表紙
  ★画像をクリックすると、集英社様のこの作品のページに飛びます★  

― 新着の感想 ―
一日3回お願いを聞く、は多すぎないか❓欲張りだな~ 好きな子なら可愛いとおもうけど
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ