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第17話「やられてばかりじゃいられない」

「サービスって、何をするつもり……?」

「ん~と……」


 風見さんは口元に手を当てて、真剣に悩みだす。

 どうやら、本気で何かをしてくれるようだ。


「――にゃんにゃん?」

「ぶっ……!」


 彼女が答えを出すのを待っていると、至近距離で猫の物真似をされてしまった。

 途端に俺の顔が熱くなる。


「な、なんのつもりだよ……?」

「ふ、ふふ……不意打ち成功……!」


 してやったり、という感じで風見さんが笑みを浮かべる。

 どうやら、俺が気を抜くタイミングを狙っていたようだ。


「やっぱり、からかってるでしょ……!?」

「あっ……! ち、ちがっ! 今のは出来心……!」


 指摘をすると、両手をワタワタと振りながら慌て始める。

 だけど、こんなので騙されたりはしない。

 やっぱりこの子は、俺をからかっているだけだ。


「サービスはいらないよ」

「ごめんってば……!」

「ちょっ!? くっついてこないで……!」


 縋りつくように俺の胸元にくっついてきた風見さんを、俺は慌てて離そうとする。

 くっつかれるのは苦手で、女の子らしい体をくっつけられると顔が熱くなるのだ。


 ――まぁ、もともと熱くはなっていたが。


「からかってないから……!」

「わかったってば……!」

「絶対わかってない……!」


 離そうとしているのに、抵抗してくる風見さん。

 なんでこうなるんだ。


「猫の物真似だって、誠司のためにしてるだけだもん……!」

「俺は頼んでないんだけど!?」

「でも、喜んでるじゃん!!」

「喜んでもない!」

「むぅ……!」


 否定していると、風見さんが頬をパンパンに膨らませてしまった。

 拗ねているのだろう。


 そして、何を思ったのか――。


「えいっ……!」


 俺の膝に、座ってきた。


「何してんの!?」

「いじわる誠司に、仕返し……!」

「これは仕返しになってなくない!?」


 足に座ってきたからといって、しびれるほど重たいわけでもない。

 彼女が背中を預けてきたせいで、髪からいい匂いはするし、視覚の角度的にTシャツの中が少し見えてしまうしで、全然仕返しになっていないだろう。


「こんなことして、恥ずかしくないの……!?」

「ふ、ふん……! 猫の物真似で散々恥ずかしい思いをした今の私は、無敵だよ……!」


 やけくそって怖い。

 もう何を見られてもかまわない、とすら思っているのかもしれない。

 正直、これのほうがダメージを喰らってそうだ。


「男相手に、こんなことしたら危ないぞ……!」

「いいもん、誠司だし……!」

「俺だって、手を出すかもしれないぞ!?」

「出せるものなら出してみてよ……!」


 風見さんは顔を赤くしながら、挑発するように俺を見てくる。

 いや、実際挑発しているのだろう。


 ここで退()いてしまうと、また俺は馬鹿にされるかもしれない。


 だから――ソッと、首筋を撫でた。


「ふぁっ……!」


 まさか、本当に俺が手を出すとは思ってなかったのだろう。

 かわいらしい声をあげながら、風見さんは驚いたように俺の顔を見てきた。


「せ、誠司……」

「男を舐めるからだよ?」


 そう言って、今度は耳に息をかけてやった。


「ひゃっ!?」


 それによって、風見さんはビクンッと体を跳ねさせる。

 しかし、俺から降りる気はないようだ。


 まだ、こりないのかな……?


「もう降りなよ……」

「やだ、絶対降りない……」


 俺がしたことを根に持ったのか、膝に座ったまま体の向きを変えて、ギュッと抱き着いてくる。

 やはり、この子は一筋縄ではいかない。

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― 新着の感想 ―
もういい加減気付こうゼ!気づかないようにするにも限度があると思うんだけど、もう少し見ていたい気もする~
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