第11話「食べさせるか食べさせられるかの戦い」
こ、これは、どういうことだ……?
こんなの、愛妻弁当じゃないか……。
まさか、風見さんって俺のことが――い、いやいや、ないない!
あの風見さんだよ!?
これも、からかいの種にしてきただけだって……!
「な、何か言ってよ……」
俺がハートを見つめて固まっていると、顔をほんのりと赤くした風見さんが上目遣いに見つめてきた。
あれ、いつもと様子が違う……?
「いや、びっくりしすぎて声が出ないっていうか……なんで、ハート……?」
「ほ、ほら、ハートってかわいいでしょ!? 美海も大好きだし、飾り付け的にも綺麗だからいいかなって……!」
な、なんだ、やっぱりそういう感じか……。
そうだよね、クラスどころか学年とかで見てもモテモテな風見さんが、俺を好きとかありえないよね……。
彼女が赤くなっているのも、単純にハート型にしたのが恥ずかしかっただけなのだろう。
「えっと、じゃあ、頂きます……」
なんだか変な空気になってしまったが、ただでさえ暑いし、さっさと食べて教室に戻ろう。
そう思ったのだけど――。
「あっ……」
風見さんが、何か言いたそうに声を漏らした。
「どうしたの?」
「えっと、その……」
彼女は人差し指を合わせ、モジモジとしながら言いづらそうにしている。
やっぱり、今日の彼女はおかしい。
まだ熱が引いてないんじゃないのか?
「あ、あ~ん、したいなぁって」
「はぁ!?」
「だから、あ~んって、したい……!」
彼女の言葉の意味を理解すると、俺の顔はみるみるうちに赤くなる。
彼女の顔も、赤く染まっていた。
やっぱり普段の彼女じゃない。
「したいって……風見さんが俺にするってこと……?」
「うん……昨日は私がしてもらったし、今度は私がしたい……!」
「いや、いいよ……! 恥ずかしいから……!」
昨日食べさせるのだって、恥ずかしかったんだ。
そりゃあ、幸せそうに食べる彼女はいいな――とも思ったけど、食べさせるのは我慢できても、食べさせられるなんて我慢できない。
「いいじゃん、それくらい……! 昨日はしてくれたんだし……!」
「するのとさせるのとじゃ、全然違うから……!」
「じゃあ、じゃんけんで決めよ!? 私が勝ったらあ~んやらせてもらって、誠司が勝ったら私にあ~んするってことで……!」
「いや、それおかしくない!? 勝っても負けてもすることには変わりないじゃないか!?」
ただ、どちらがするかの違いなだけで。
どっちみち、恥ずかしい。
「するのはいいんでしょ……!? だったら、それでいいじゃん……!」
「無茶苦茶すぎるって……! 俺にメリットがない……!」
いや、正確にはメリットがないわけではないのだけど、デメリットのほうが大きい。
わざわざじゃんけんする必要なんてないのだ。
「頑張って、朝早起きして作ったのに……!」
「それはずるいでしょ……!?」
そんなこと言われたら、俺が断れないってわかってるじゃないか……!
俺は他人の頑張りを無下にしたくないタイプの人間だ。
必然、こういったアピールをされてしまうと、無視ができない。
「でも、事実だもん……!」
「わ、わかったよ……。ただし、一発勝負だからね!?」
こうなれば、じゃんけんに勝つしかない。
大丈夫、クラスで彼女が他の女子とじゃんけんをするのは時々見るし、高確率で初手はパーを出していた。
だから、チョキを出せば勝てる可能性が高い。
「それじゃあ、いくよ……! 最初はグー、じゃんけん、ぽん!」
俺は彼女の掛け声に合わせて、チョキを出した。
そして、彼女は――グーだった……。
なんでだよ……!
話が面白い、キャラがかわいい、
お前らさっさとくっつけ……!
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