任務―最後の愛―
途中でキス表現が出てきます。
誰かが泣いてる、雨に紛れて温かい水が落ちてくる。
ハッキリしない記憶の中で、それだけを覚えていた。
ーーーー
ハッと目が覚める
知らない白い天井が私を見下してる。
「こっち見るなよ・・・あーあ」
寝返りを打ち、もう一度目を閉じる。
(何をやってるんだ私は)
記憶が曖昧でも分かるよ。
「戦」
「はい何でしょ・・・てうわっ!」
「そんなベッドから勢いよく起きたら傷が痛むぞ。戦」
「父!」
公安の最高トップである父が食べ物持って、呆れた様に椅子に座った。
「食え」
「うっす、あざっす。いただかせて頂きます」
「聞いたぞ、大変だったな」
「・・・・・私外されるのか?あいつとのコンビ」
「お前次第だ」
「あっそ・・・で何しに来たんだよ。暇人じゃあ無いんだろ?」
「一応選択肢を与えに来た。父としては引いて欲しい・・・と思うがな」
それだけ大変な任務か。
「裏の組織にスパイとして、終と一緒に潜り込んで欲しい。彼にはこの件はもう話してある。後はお前だけだ」
なるほど、それはヤバいな。
アイツ一人で任せきるのは、なんだか心配だ。
でも・・・・
私の傷を見る。
今の私じゃあ足を引っ張るだけなんじゃないか?
「明後日には決断しろ。決まったら、いつもの仕事場に来い、それだけだ」
父は立ち上がり、出て行こうとする。
「あまり心配させるな」
「うるせーよ、お父様」
ふっと、鼻で笑って去って行った。
静かな病室で、揺れるカーテンを見ながら
考えをまとめる。
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(今日が任務の日。もしかしたら戦とはもう会えないかもしれない)
"裏"という戦闘集団の事は重々分かってる。下手すれば殺されるかもしれない
死とは常に隣り合わせになるだろう。
ガチャッ
「親父・・・やっと来たの・・・か!?」
警察の最高トップである親父が来たと思ったら、意外な人物が此処に現れる。
「戦!!なんで!?此処にいるの!?」
「なんでって仕事だよ仕事」
「傷は!?傷は大丈夫なの!?」
「大丈夫だ。もう治った。それよりごめんな、足を引っ張って」
首を全力で横に振る。
「いやそんなこと無いよ。逆に生きててくれてありがとう。でも任務へは行かせられない」
「・・・・・足を引っ張らないから。連れて行ってくれ終。私を一人にしないでくれ。やっぱり一人は心細い」
「・・・・・そう戦がそこまで言うなら・・・認める。てことで二人で頑張ろう!戦!」
二人は拳を合わせた。
ガチャッ
「やっぱり来たか。戦」
「父・・・」
「終ずっと君の事、言ってたよ」
「親父!後で潰す」
皆が笑う、そして
「任務の話をしよう」
真面目な顔つきで、話を聞かされる。
私達は明日から、表世界の存在は消えるらしい。寂しいけどしょうがない。
とにかく今日は二人で久しぶりに飲むことにした。
最後の"表"の世界を満喫する事にする。
「明日から私達は裏だなぁ」
「ああそうだな」
酒を一口飲む
「びびってんの?」
「そんな訳ないだろ。そっちこそ、びびってるんじゃあないの?」
「なわけないだろ」
机に広げられる沢山の食べ物に手を伸ばす。
「なあ先に死ぬなよ」
「そっちこそ」
「戦」
「なに」
相棒から突然にキスをされる。
深くて優しいキスはとても、暖かった。
彼は私から離れて
「好きだ」
なんて言うから
私の顔面は、急に真っ赤になる。
「酒飲んでないときに言えよ。そういうの」
目を逸らしながら、ふっと見えない様に笑った。
なんとなく、気まずくなった空気の中、日にちは変わり
任務の日になる。
足を裏へと踏み入れた。二人なら怖くない。
――――――――
"表の世界から二人の存在は消えた。"
5年の年月が過ぎたある日、俺たちが裏切り者だという事がバレた雨の日。
銃撃戦が起こる中で二人は逃げる。
片腕を負傷した戦、右足を撃たれて負傷した俺。
でも情報は全て、親父達に渡したから、後は逃げるだけ。
一度体勢を整えるため、近くの廃墟に隠れる。
(もし捕まったら・・・拷問か、人質かどっちかだな)
彼女の方をチラリと見る。
「死ぬまでドンパチするしかねぇな」
そうだね・・・でも君には苦しまされずに綺麗に死んで欲しい。
ジャキ
「何のつもりだ終」
彼女に銃口を額に付ける。
何度も何度も心の中で謝る。
「さすがに笑えねぇよ終!!!」
君が汚されるのを、見たくない、俺のエゴを許してくれ。
パァン!
「今銃声がしたぞ!!こっちだ!!」
血を浴びた姿で涙を流し、
「ごめんな、戦。俺はクズ野郎だと承知の上で一つ、言わせてくれ」
戦が改造した銃に弾を込めて構えた。
「今までありがとうな戦。俺はお前を愛している。それは今も変わらない」
雨は良い、涙を隠してくれる。
そのまま隠れてしまえば良い。
「さぁ行くぞ!ゴミ共」
強く睨み、これを戦いの再開とした。
結局この戦いで終は、負傷しながらも大きく組織を乱す事に成功するが
結局は裏に捕まり、案の定、拷問されて、殺された。
当たり前だよな、警察とかの情報欲しいもんな。
彼は最後に言った、「良かった彼女だけはこんな目に遭わなくて」
それは誰にも届かなかったけど、死に際で見えた彼女は、よく頑張ったって俺を褒めてくれたんだ。
――――――――
警察特殊部隊と公安殊犯罪対策課のタッグ、出動!END