告白と本音
「なあ戦」
「なんだよ、改まって・・・・」
すぅーと息を吐き口を開く
「毎日俺の抱き枕になってください!!」
「出勤して一言目が下ネタとか死ねよ」
「いや待って!違う!そういう意味じゃ無くて・・・
というかなんで下ネタに持ち込むんだよ!?ほら毎日味噌汁飲みたいとかあるじゃないか、アレだよアレ」
「なるほどねぇー認めたくはないけど」
「で俺は考えたわけよ。毎日一緒にいて欲しい時、何て言えばいいか」
「なるほどなるほど?」
普通に言えばよいのでは?
なんて口には出さずに、それで?と続きを求めてから、買った缶ジュースのふたを開けて、飲む。
「夜寂しいから人肌がある抱き枕になって貰えば、解決するんじゃないかって」
ぶはぁ!
「戦!大丈夫か!?急に吹き出して・・・・」
「げほっお前が解決した瞬間、私の所で新たな問題が生まれるんだわ。あと何でそういう発想に行くんだよ、げほっげほっ」
「だって寂しくないか?誰もいないんだぞ?お前も俺と一緒に寝たいだろ?」
前提で語るのを止めて欲しいと思いつつ、首を横に振る。
「そんなわけねーだろ。大人しく普通の抱き枕買って寝ろ!しっかり、給料貰ってんなら、買える金位あるだろうがよ。私はちなみに一人で寝る方が良いわ」
二本の指で彼をビッと指を指す。
「それもそうなんだけど、違うんだ!俺はただ常日頃の、愛を伝えるためにはどうすればいいかを考えていて・・・そうか!」
急にコテンと首を傾げる男。
「教えて戦、俺はどうすれば、愛のメッセージが届くと思う?」
「なんで本人に聞くんだよ。こういうのは、お前の頭で考えるもんだろ。頼むからこの話から素直に手を引いてくれ」
「男には引けない時もある」
真面目な表情、いつものふざけとは違うと察する。
(引けないってなぁ、こんなくだらねぇとこでプライド持ちやがって。てめぇは子供かよ)
右手で両目を隠し、現実から逃げようと試みるけど
隣の相棒から発せられる、キラキラとした目の輝きが私のガードを貫通してくる。
私は5分ぐらい粘ったけどダメだった。
負けたよ、ならば希望だけを見せてやる。
「射撃勝負で私に勝ったら、その悩みに付き合ってやるよ。」
実現出来なかった悔しさに溺れろ、と見下してやると
それを察したのか、余計に表情が明るくなる男。
「よっし!分かった!今からお前に勝つ!」
バンッ、と勢いよく立ち上がり、気合い十分な足取りで射撃訓練場へと向かっていった。
「はぁ」
正直コイツならやりかねない。失敗したら良いのに。
なんて思うけど、心の中では・・・。
腕を組みながら椅子で、1クルクルしてから
私は彼の後を追った。
―射撃訓練場―
「さて・・・始めようか。言っとくが私は負けない」
「ああそうだな、俺も負けるわけにはいかないんだ」
弾丸5発分を詰めて
二人はそれぞれ銃を構える。
パァン!
まずは様子見、それでも真面目な表情の二人。
難なくど真ん中にヒット。
パァン!
二発目も同様に当てる。
パァン!
三発目ヒット
さすがにここまでついてくると、お互いが少しだけ焦り出す。
パァン!
正確に当て続ける相棒に、心の中での焦りが本格的に顔を出す。心を落ち着かせるため一度目を閉じた。
(次で最後か・・・・次外せば、さっきの話が現実になる!別に嫌ではないけれど、負けたくないそれだけだ!)
(もしここで間違えたら、俺の負け。それは絶対に避けなければ!)
勢いよく目を開け
パァン!
穴が開いた跡、つまり銃弾跡を見て、歓声を上げる者と悲痛の叫びをあげる者がこの場に生まれた。
「あああああ!嘘だろ!?マジで!?ありえないクソぉ」
「よっし!俺の勝ちだな」
二人は空っぽの銃を机の上に置く。
隣からは凄い期待に満ちたオーラがビシビシと伝わってくる。
「はぁ・・・分かった付き合えば良いんだろ?で何して欲しいんだよ・・・・」
「抱き枕になってほ」
「よしっ!仕事終わりに終の抱き枕買い物に行くかぁー」
「・・・・・ああ。ソウスル。俺もソウ思っテタンダ!!奇遇ダナァ!」
心底違う、そうじゃ無いと思ってる。
しゅんと少し残念そうにしていると
「まっ、お前が私に勝ち続けられるなら、この先チャンスはあるかもしれないぜ?」
意味ありげに笑いかける彼女に意識してしまい、すっと目を逸らす。
でも表情は嬉しそう。
[なのを私は知っているんだけどなー]
[な事を知られたくないかなー]
でも
「期待しといたら良い?」
「どうだろうなー。好きに捉えたら良いと思うぜ?。それより帰りラーメンでも食って帰ろうや!勿論お前のおごりでな。」
「なんでそうなるんだよ。まあ別に良いけど。あんまり高いモノは頼むなよ?」
「さぁ?」
と意地悪に笑って彼女は先に仕事場へ向かっていった。
「なんだその笑いは。・・・・やれやれ」
俺も彼女のあとをついていく。
――――――――
俺の相棒は口は悪いけど、意外と優しくて強い自慢の相棒。
背中を任せられる唯一の人だと思っている。
私の相棒は変な事ばかり言う奴だけど、意外と賢くて強くておまけに優しい自慢の相棒さ。
背中を任せられる唯一の人だって思ってる。
「絶対に死んでも彼女にこんな事言わないけど」/「口が裂けてもアイツにこんな事絶対言わないけど」