牛のくび【3】
平民のひろろさん様からネタを貰いました。
期待に答えれなかったらすみません。
防空壕といわれてる物が有る。
空からくる敵の攻撃に対し人員や施設を守るため地を掘ってつくる壕の事だ。
太平洋戦争では、米軍機が日本本土の空襲を開始したころ職場や家庭に急造されたらしい。
だが当時の日本は資材不足のため、ほとんど防護効果がなかったらしい。
応急待避施設として位置づけられていた。
但し大量の焼夷弾により広範囲の都市爆撃が行われるようになってからは、地下壕で蒸し焼きになって死亡する人々が続出したらしい。
防空壕と隣組の消防活動に頼った民間防空が市民の犠牲を大きくしたのである。
そのため敗戦直前になると、空襲の際は爆撃地域から逃げ出すようになったらしい。
無いよりマシではなく逃げた方が良かった。
等というオチだ。
そんな所に僕は相棒にして親友の鉱石ラジオと学校のクラスメイトと来ていた。
肝試しに。
僕には縁の遠い話なんだが……。
肝試しなんてイベント。
うん。
何でこうなった?
『空気だな』
「空気だね」
僕と相棒の言葉が一致する。
断れる訳がない。
皆来るんだし行くよね?
という顔で聞くなと言いたい。
ため息を付きながら視線を横に向ける。
「楽しみだね肝試し」
「え~~行くの私怖い~~」
「大丈夫だ俺が守ってやる」
「いや~~いい感じで不気味だね~~」
男女四人の集団。
肝試しである。
うん。
肝試し。
クラスメイトに誘われました。
カップル達に……。
僕一人なんだけど?
新手のイジメ?
他のメンバーは合宿やら何やら。
親戚の所に遊びに行くとか。
法事とか何とか。
居ません。
其れで人間が足りないらしく僕が誘われました。
強制的に。
……。
何でだよ。
今まで接点無かったろ。
何で僕を誘う?
意味分からん。
『そうだなボッチを誘う意味分からんな』
「ボッチちゃう相棒居る」
『……』
僕の言葉に相棒は照れてる。
うん。
『まあ~~傍目にはボッチに見えたんだろう』
「だから誘ったと?」
『先生が仲間外れは良くないと言ってたからな』
「僕の相手は居ないんだが?」
明らかに僕だけ浮いてる。
一人だし。
パートナー居ないし。
『どうも会話を聞いた限りドタキャンらしい』
「何で?」
『本来来るはずの子が用事で来れなかったら』
「友達?」
なら仕方無いな。
寂しいけど。
『イケメンの佐藤君が来ないから』
「取り敢えず後でしばく」
イケメン死すべし。
因みに僕は最後らしい。
クジで決めました。
……何だろう此れ?
仲間外れ感が酷い。
ルールは簡単。
防空壕の奥まで行って来ればいいだけ。
其処に出口が有るので其処から外にでる。
出口付近で最後に人間が来たら終わり。
……此れ肝試し?
等と言いたい。
いや良いけど。
最初のカップルが入ってから一時間後。
二組目が防空壕に入る。
更に一時間経過した。
僕の出番だ。
入ろう。
『うん?』
其の防空壕は天然の洞窟を人の手で掘った所だ。
所々自然の洞窟ままだ。
鍾乳洞でこそ無いが足場を踏み外すと滑りそうだ。
僕たちは懐中電灯で辺りを照らす。
シンと静かな感じだ。
入り口から奥を見通すことのできない。
深い。
深い洞窟。
ちょっと深い洞窟。
そう思った。
なのに何故か違和感が有る。
そう。
何か違和感が。
「おい……先に行った〇〇さんの声がしないんだが……」
「外にでたんじゃないの?」
ヒソヒソと話すカップル。
此の異様な雰囲気に飲まれているみたいだ。
本人たちは普通に話しているつもりなのだろうが……。
う~~ん。
なんか変だ。
「ねえ?」
「「ひっ!」」
僕が声をかけると悲鳴を上げるカップル。
『名前で呼んでやれよクラスメイトだろう』
「クラスメイトだけど友達ではないから名前は知らん」
『……』
僕の言葉に呆れる親友。
「何か?」
僕の声に眉を顰める男。
「此の洞窟はどれぐらいの長さなの?」
「百メートルも無いはずだけど正確なところは……」
「其れおかしくない?」
「何が?」
「明らかに三十分以上歩いてる筈なのに何処にも着かないけど?」
僕は自分の疑問を伝える。
「「え?」」
「異常事態だ」
この様子気がついて無かったみたいだ。
此れは一体……。
僕は首を撚る。
『牛の首に関係する都市伝説を幾つか思い出した』
「と言うことは其れ関係?」
『可能性はある』
「あ~~」
僕と親友なら兎も角。
知らんやつとはな~~。
見捨てるか?
『クラスメイトだろう?』
「クラスメイトは友達ではない」
『さよけ』
うん。
パニックを起こされたら困る。
だからなにも教えん。
「来た道を帰ろう」
「「え?」」
「聞いたろ異常事態だ来た道を帰る死にたくなかったら急げ」
「「……」」
僕の言葉に唖然とする二人。
死にたいなら知らんわ。
早く逃げよう。
一時間後。
未だに洞窟から出られない。
カップルは僕に無言で付いて来た。
此の異常事態に不安に思った為だろう。
「……出れんな~~」
『……』
親友は無言だ。
多分都市伝説の特定をしているのだろう。
そんな時だった。
ヒタ。
ヒタ。
ポタン。
うん?
ヒタ。
ヒタ。
ポタン。
ヒタ。
ヒタ。
ポタン。
誰かが此方に歩いてくる。
誰かが。
何かを零しながら。
水のような何かを。
「あれ?」
「おい」
おや?
此れは……。
千鳥足で誰かが歩いてくる。
背格好からして男だ。
だけどおかしい。
「〇〇君? だよね……」
「あ……いや……変じゃないか?」
「何が?」
「首が……無い……」
そう首が無かった。
首の無い死体が血を溢れさせながら歩いていたのだ。
其の背後から現れる上半身裸の大男。
いや其れを大男と呼んで良いか。
牛。
牛の頭を持つ異形。
其れはゆっくりと此方に歩いてくる。
右手には斧を持ち。
左手には血まみれの首を引っ提げてた。
悲鳴がした。
悲鳴が。
女性の悲鳴。
恐怖に駆られた男が女性を突き飛ばし逃走。
動けなくなった女性は異形に惨殺。
恐怖に引きつる男の運命は既に決定していた。
此の時を境に記憶が無くなる。
気がつくと病院に居た。
因みに精神系の病院では無いと断言しとく。
普通の外科です。
警察関係と断言しとく。
全治三ヶ月の傷だと。
「なんで怪我してんねんっ!」
『仕方ないだろう?』
「何でだよっ!」
『クラスメイトが全員死んで一人無傷どう思う?』
「不味いな」
『だろう』
「納得できない~~」
『へいへい』
「そんで? アレは何の都市伝説だったの?」
『洞窟がミノタウロスの住む迷宮に繋がる都市伝説』
「へえ~~」
ミノタウロス
ポセイドーンにミーノース王の后は呪いをかけられ、白い雄牛に性的な欲望を抱くようになった。
其の結果牛の頭をした子供・ミーノータウロスが産まれた。
ミーノータウロスは成長するにしたがい乱暴になり、手におえなくなる。
ミーノース王はダイダロスに命じて迷宮を建造し、そこに彼を閉じ込めた。
そして、ミーノータウロスの食料としてアテーナイから9年毎に7人の少年、7人の少女を送らせることとした。
都市伝説では食料としての人間が足りないと此の迷宮に繋がるという。
言わば神隠しというやつだ。
其れに僕は巻き込まれたというわけだ。
はた迷惑な。
「まあ~~面白かったし良いか」
『良いんだ』
「うん」
僕の言葉に呆れた口調の親友だった。