ひとりだちのとき
ひとりだちのとき(1)
それから数年。ぼくたちはすっかり大きくなった。
おとうさんとおかあさん、そして子供のためのちいさなおうちは、もうぼくたちにはせまくって、しょっちゅう『ひみつ基地』に泊まりに行っていた。
そんなある日、にゃあちゃん――ねこさんが、神妙な顔できりだした。
「あのね。ぼく、うちを出ようと思うんだ」
それは、うすうす予感していたことだった。
猫さんはすっかり、うでのいい『かりうど』になって、おまつりのときにも、大きなえものを持ってきてくれるようになった。
そろそろほんとの大人だね、と、おとなたちみんなからいわれていたのだ。
「どこにいくの?」
「いまかんがえてるのが、たんぽぽのはらの、むこうがわ。
いつもいく丘に、かりごやをつくって、しばらくはそこを拠点にしようかなって」
それをきっかけにぼくたちは、わいわいとそれからのことをはなした。
「ねえ、みんなはどうするの?」
きつねさんがぐるっとみまわすと、ワンくんあらため、いぬさんがしっぽをふりふり言った。
「ぼくは、いままでどおり、うちでくらすよ。
かわいいおいっこやめいっこたちの、お世話をしてあげなくちゃだからね。
くまさんは?」
くーちゃんあらため、くまさんものんびり言った。
「ぼくも、おとなりに新しく家を建てて、ずっとあの森でくらすつもりだよ。
森の木たちのめんどうをみなくちゃ」
「そっか」
「そっかぁ」
うなずきながらぼくは、きつねさんをみた。
きつねさんも、ぼくをみていた。
ひとりだちのとき(2)
「うちはもう、おとな三人じゃあちいさいから、そろそろ家を出て、ひとりだちしなくちゃ」
ぼくがそういうと、きつねさんはうなずいた。
「うちもだよ。
でも、どうしよう。
ぼくがひとりでくらすなんて、できるのかしら?」
きつねさんは、ぼくよりからだは大きいのに、ぼくより心配性なのだ。
そんなところが、ほっとけないんだけれど。
だからもうぼくは、すぱっといってしまった。
「ねえ、きつねさん。
どうせなら、いっしょにくらさない?」
「ええっ?!
いいの、うさぎさん?
ぼくも、それを言おうと思ってたんだ!
そうだ、いいこと考えついた。
お山のひみつ基地に、お台所とかもちゃんとつくって、そこに住んだらどうだろう。
そうすれば、いつでも基地をピカピカにしておける。
みんなで集まるときも、すぐにパーティーができるでしょ?
みんなのほしいもの、あそこにみーんなつくって、ぼくたちがその管理人になるんだ!」
きつねさんがはなすごとに、みんなのめがキラキラしていくのがわかった。
ぼくのむねも、ドキドキしてきた。
『ぼくらのひみつ基地・リフォームけいかく』は、まんじょういっちで、スタートしたのだった。
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次回、最終話。
うさぎさんが『さいきょう』を志す直前までのおはなしです。
あす朝の投稿となります。
どうぞ、よろしくお付き合いくださいませ。