たんぽぽのはら、たんけんたい!
たんぽぽのはら、たんけんたい!(1)
毎日はしりまわっているうちに、ぼくときつねさんはもうちょっと、大きくなった。
おともだちも、何人もふえた。
いちばんなかよくなったのは、近くにすんでいる、ちゃいろいいぬの男の子だ。
その子、そのころはワンくんとよんでいた子は、ちいさいけれど、とてもガッツのある子で……
どれだけかけっこをしても、ぜったい追いついてくる。
スピードはあるけれど、ちょっとあきらめやすいきつねさんは、おにごっこをするといっつもつかまってしまっていたものだった。
でも、ワンくんはとても、やさしくって。
ずーっとだれかが鬼をやってると、さりげなくつかまって、かわってあげるのだ。
そんなワンくんのことを、ぼくたちはとてもだいすきだった。
ある日のこと。いつもはどちらかというとおとなしいワンくんが、すごい計画をもってきた。
なかよしみんなで、向こうにみえる山に登ってみよう。
みんなでおべんとうをもって、ふもとの森をぬけて。
きっとそこには、すっごいたからものがあるはずだ!
ぼくたちはまだこどもだということで、森にはいるお許しはもらえてなかった。
でも、だからこそ行きたくなる。それが、こどもというもので。
結成したのは、『たんぽぽのはら、たんけんたい』。
めいめい、こっそり、お弁当をもって、いつもの木の下で集合。
なにくわぬ顔で、野原をよこぎって。
いよいよ森が目の前になったら、いっきにダッシュ!
そうしてぼくたちは、はじめてのぼうけんをはじめたのだった。
たんぽぽのはら、たんけんたい!(2)
森のなかは、いままでみたこともないものでいっぱいだった。
なんぼんもの高い木。きらきらのこもれび。
大きな魚のかげのうつる流れ。
あざやかに赤いきのこや、かわいいピンクの花。
あのおさかな、おおきいね! とか、このきのこ、どくきのこかな? とか、このお花はきずぐすりになるんだって! とかいいあって、ときどき、木の実や石ころを拾ってみたりして。
じけんがおこったのは、そろそろお昼にしようかと話しはじめたころだった。
おしゃべりしながら大きな岩かげをまわりこんだぼくたちは、どしんっと、おおきくてやわらかい何かにぶつかってしまったのだ。
「うわあ、まものだ!」
おどろいて叫んでしまったぼくたちだけど、かえってきた声にびっくりした。
「うわあ、まものだ!」
えっ? とおもってよくみれば、ぼくたちの前でしりもちをついているのは、大きいけれど、やさしそうなくまのこだった。
『たんけんたい』のひとり、猫さん――そのころは、にゃあちゃんと呼んでいた――が、声をはずませた。
「あれっ、くーちゃん!
ひさしぶりー! げんきにしてた?」
「えっ、にゃあちゃん?
どうしたの、こどもだけで、こんな遠くまできて?」
なんと、くまのこはにゃあちゃんのお友だちだったのだ。
これはいいや。そうおもって事情をはなすと、くーちゃんも目をかがやかせた。
「あのお山にのぼるの? たのしそう!
ぼくもまぜて! いっしょにたんけんしよう!」
たんぽぽのはら、たんけんたい!(3)
森にすんでるくまさんをなかまにしたことで、山へはそのあと、すぐにたどりつけた。
けれど、いかんせん子供の足だ。すこしのぼったところでくたびれて、今度またこようということで引きかえしたのだった。
けれど、ぼくたちはあきらめず。
すこしずつ、すこしずつ、行ける距離を伸ばしていって……
一年後。ついに、ぼくたちは登頂に成功した。
みおろせば、地平線まで広がる絶景。ぼくたちは、しばしことばを失っていた。
どこまでもどこまでもひろがる世界が、こんなにもきれいだったなんて。
詩心のないぼくには、どうやってもうまくいえないのだけれど、ぼくたちはみんな、すっごくすごく、感動したのだ。
それからみんなで歓声を上げて、だきあって。
おべんとうをたべて、水筒につめたわきみずをのんで。
そうっとふもとにおりると待っていたのは、森と野原にすむみんなの笑顔。
そして、ぼくたちの初登頂をいわう、おいわいの席だった。
おとなたちは、ぼくたちがなにをしてるかなんて、とっくに見抜いていた。
見抜いたうえで、そっと見守ってくれていた。
むかしは、あの山にのぼることが、一人前とみとめられるための『試練』だったらしい。
ぼくたちは、すごいね、もうおとなだね、とみんなにほめてもらって、とってもくすぐったい気持ちになったのだ。
でも、としっかりくぎを刺された。
『おとななら、ちゃんとどこにいくか、おうちのひとにいうこと!』
『おうちのお手伝いも、ちゃんとね?』
そんなわけでぼくたちは、おうちのお手伝いのかたわら、山にのぼって探検しては、おみやげをもってかえったり、ひみつ基地を作ってお泊り会をしたりしながら、ほんものの大人になるまでの日々を過ごしたのだった。
はじめてのぼうけん!
うさぎさんたち、ぐんっと成長しました^^
つぎは、夕方~夜くらいの投稿です。
そろそろひとりだちをかんがえだす、うさぎさんたちのおはなしです。
どうぞ、おたのしみに!