きつねさんと、はなかんむり
きつねさんと、はなかんむり(1)
すっかりなかよしになったぼくときつねさんは、まいにちいっしょに走り回った。
ふたりともまだ小さいのだから、あまり遠くに行っちゃだめよ、といわれていたから、まずは野原をたんけん。
ちょうちょとおいかけっこをしたり、たんぽぽのわたげをおっかけたり。
はしりつかれてねころがると、空はどこまでも青かった。
「ねえねえ、うさちゃん」
まだちいさくて、よく口が回らないきつねさんは、このころぼくのことを『うさちゃん』って呼んでいた。
今思い出してもかわいらしくって、胸がほこほこしてしまう。
でも、そのときもう『てれや』だったぼくは、つとめてなんでもないように「なあに」とへんじをするのだ。
このときもそうだった。なんでもないように「なあに」というと、「ちょっとおきてみて!」とウキウキした声がつづいた。
体を起こすと、あたまがこしょっとくすぐったくなった。
「えっ、なに? なにしたの?」
「ふふっ、みてみて!」
いたずらっぽくわらうきつねさんにひっぱられて、みずたまりに顔をうつしてみて、ぼくはおどろいた。
ぼくのあたまのうえに、れんげとたんぽぽの花かんむりがのっかっていたのだ。
きつねさんと、はなかんむり(2)
「え、えっ? きっちゃんが、これつくったの?」
このころはぼくも小さかったから、きつねさんのことをきっちゃんってよんでいたのだ。
ちょっとはずかしいので、あんまりつっこまないでくれるとうれしい。
「うん!
こないだ、ほしそうにしてたでしょ?
だから、おかーさんにおしえてもらったの!
どーう? きにいった?」
「うんっ! ありがと、きっちゃん!!」
オレンジのしっぽをふりふり、ほこらしげなきつねさん。
うれしくてうれしくて、ぼくはぽんっととびついた。
今思えば、ちょっと編み方がゆるくてところどころよれよれしてたけど、それでも、小さなこどもが初めて作ったにしては、立派すぎるほどのもので……
なにより、ぼくのためにと。わざわざならって、つくってくれた。
そのことがぼくには、すごくすごく、うれしかったのだ。
花かんむりは夕方になるとしんなりしてしまったので、ほぐして洗ってサラダに入れて、みんなでおいしくいただいた。
きれいな花かんむりを食べてしまうのは、ちょっぴり残念な気もしたけれど、蜜をふくんだれんげはほわんとあまくて、たんぽぽはほろんとほろにがくって、ぼくは二度、しあわせなきもちになったのだった。
うさぎさんときつねさんの、ちいさなこども時代のおはなしはここまでです。
お昼過ぎくらいに、もうすこしおおきくなったころのお話を投稿いたします。
どうぞ、お楽しみに!