きつねさんとの出会い
ぼくの宝物。古びた一冊の、日記帳。
ページを開けば、いつだって鮮明に、思い出すのだ。
あのころのこと。このときのこと。
『ふわん』とたちのぼる、あの頃の香りとともに。
きつねさんとの出会い(1)
ぼくは、うさぎだ。
おとうさんもおかあさんも、黒いおみみに、青い目をしてる。
『かぞくだからね、いっしょだね』といわれるたびに、ぼくはうれしくなった。
だってぼくは、やさしいおとうさんとおかあさんが、だいすきだったから。
そんなぼくはある日、出会ったのだ。
ぼくたちとおなじ、青い目をしたきつねのこに。
その日は、はじめてのひとりでのおさんぽ。
といっても、ぼくてきには『らくしょう』コースだ。
だって、ゆくさきは、いつもの野原。
おとうさんやおかあさんと、なんどもいっしょにあるいた場所だから。
でも、その日はいつもとちがってた。
たんぽぽのしげみのなかに、はじめて見る子がいたのだ。
オレンジいろをした、きつねのこ。
ぼくをみるとにっこりわらって、「やあ」と声をかけてくれた。
そのこがぼくをみる目は、きれいな青い目をしてた。
きつねさんとの出会い(2)
ぼくはぽん、ととびあがっていた。
おめめのいろが、おんなじだ!
ということは、このこはきっと、ぼくのかぞくなのだ!
……いまでもこれは笑い話だけれど、まだちいさな『こうさぎ』だったぼくは、そんなふうに思い込んだのだ。
ぼくはすぐ、きつねのこのところにはしっていって、こういった。
「えっと……ねえ、きみはぼくの、おにいちゃん? もしかして、おとうと?」
「えっ?!
それじゃあきみは、ぼくの、おとうと、なの? それとも、おにいちゃん??」
きつねのこも、それをきいておおあわて。
ふたりしてどうしようどうしようといっていたら、ぼくのおとうさんとおかあさんと、きつねさんのおとうさんとおかあさんが笑いながら、やってきた。
けっきょく、きつねさんはぼくのお兄ちゃんじゃなかったし、ぼくはきつねさんの弟じゃなかった。
けれど、それをきっかけに、ぼくたちかぞくは、ほんとうのかぞくのようになかよくなった。
もちろん、ぼくときつねさんは、ほんとうのきょうだいのようになった。