第6話 寿命
鳩とかカラスみたいに空を飛びたい
まあそこまでじゃなくてもせめて走ってみたい
入院中ベッドの上で何度も考えたことだった
「ぼく空を飛びたい!」
「まあ今すぐには無理だろうから基礎から練習しよな」
「うん!」
――1ヶ月後
体内の魔力を操作して身体能力を向上させる事は可能になった
つまり羽で浮かぶだけなら出来るようになった
その前に走る練習もしたんだけど、いかんせん前世では走ったことがないし、そもそも人間だったからドラゴンの体はなんとなく使い慣れない
つまり複雑な動きは出来ない、
それでも1ヶ月以上使い続けていれば慣れてくるもので、最近では特に不自由は感じていないし、なんなら動けなかった前世より100万倍良い!
今日もドレイクは畑に作業しに行ってるみたいだから、僕も日課のとれーにんぐを始めよう!
まずは瞑想からだ
そんな風にしばらく練習していると、ドレイクが戻ってきた
「おお!もうそんなにしっかりホバリング出来るのか!すごい成長速度だな!」
「いやー、むしろホバリングしか出来ないって言うか・・・」
「?最初はそんなもんだろう?」
「けどもう1週間以上ホバリングの段階から成長してないんだよ!」
「いやいやお前おかしいぞ笑、ほんとにドラゴンか?笑
王国の騎兵隊にいる普通のドラゴンは命がけで巣から卵を持ち帰って赤ちゃんの時から育てて、世話係が何世代も変わりながら50~100年かけていろいろな技能を身につけさせて、それでやっと部隊に配属されるんだぞ?普通のドラゴンがそれだぞ?おまえが属性持ちの上位種だって事を加味しても30年はかかるんじゃないか?それなのにお前は生後2週間だか3週間で自分の羽で飛び始めてるんだぞ?十分早いだろ?」
「へ?50年?」
「ああ、」
「ドラゴンの寿命ってどれくらいあるの?」
「正確には知られていないけど、今の龍王は1000歳前後だって言われてるな」
「龍王なんているの!?」
「当たり前だろう、まあ今となっては象徴みたいなもんだけどな」
天皇みたいなもんかな?
それにしても龍の寿命がそんなに長いとは思わなかった
けど僕は知っている
寿命はいつも全う出来るわけではないということを
人生は努力を続けたほうが絶対に悔いは残らない
今回は竜生だけど・・・
「だけど寿命が全うできるかはわからないじゃんか!」
僕がそう言うと、ドレイクは少し驚いたような顔をした後でしばらく考えてから
「そんなこと言うドラゴン初めて見たよ。本当にアースドラゴンか?」
と言ってきた
「どういうこと?」
冷たい汗が背中を伝っていく
「いや、ドラゴンとしても赤ん坊としても悲観的すぎるし、幻獣とかが化けて俺を試してるんじゃないかっていう気になってきてな」
「僕はドラゴンだよ、たぶん」
「まあそうだよな、お前が幻獣だったら俺たぶんもう死んでるもんな」
「と、当然じゃーん」
「まあそうだよな」
ドレイクはなんとなく歯切れの悪そうな返事をすると、家の中に入っていった
周囲から音が戻ってきて、僕は大きく息を吐いた
僕は自分が呼吸を忘れていたことに驚いた
次からは気をつけよう
そう決心した矢先に、またもや僕はやらかしてしまう